アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

駒井哲郎 煌めく紙上の宇宙 横浜美術館

自宅から近いのに、定期券の範囲外ということで行く回数の減っている横浜美術館へ。夏のモネ展以来。

 

yokohama.art.museum

 

まず、とても空いていて驚く。

目の前で開催されてる手作り市よりも空いてる。

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横浜美術館

駒井哲郎展に行こうと思ったきっかけの1つが、ポスター。

 

<<題名不詳>>1971年頃(福原義春コレクション)

 

メルヘンチックなのに、黒がメインで少し寂しそうな雰囲気があって、目が釘付けになりました。モネ展の次は、この展覧会なんだ・・・。知らないひとだし、版画だし、「地味そう」と思いつつも、やっぱり何度も見てしまったこの版画に魅かれて、来てしまいました。この版画は、モノタイプという手法で作られていて、版画なのに、1枚しか刷れない特殊なものだと、学芸員の日比野さんの説明で知りました。びっくり!

この版画は、福原義春コレクションということで、「資生堂の!」と思い、先日の資生堂ギャラリーで見た「それを超えて美に参与する 福原信三の美学」とつながっていきました。

 

www.cinra.net

というインタビューを見つけました。

福原義春さんと 駒井哲郎は、10歳離れた慶応幼稚舎の先輩後輩ということもあり、担任の先生も一緒、跡取りという状況も一緒、ということで、親近感を抱き、作品を蒐集されていたようです。今年は、個人の蒐集家の展覧会を見る機会が多かったのですが(フィリップス・コレクション展バレル展など)、個人の蒐集家の方は、作品への個人的な愛情や物語をお持ちのような気がします。

 福原さんのインタビューのこの一言が、響きました。

福原:駒井さんの作品は、やはり実際に絵の前に立って見てほしいですね。写真で模様や色や形だけを見て、分かったような気になってしまうのは本当にもったいないです。こればかりは本物に触れてみないと。自分で見て、考えてみてほしいと思います。

 

さて、駒井哲郎展のポスターに戻りますが、作品はもちろんなのですが、フォントが美しいことも、魅力だと思います。

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 特に「を」がたまりません。「ルドン」の文字もたまりません。

あとで資生堂が協賛と聞いて、納得しました。資生堂のギャラリーや花椿のフォントは、美しい。

 

そんな理由で入った駒井一郎展。

一通り見るのに、かなりの時間を要します。238点と資料!!

 

第1章 銅版画との出会い

第2章 戦後美術の幕開けとともに

第3章 前衛芸術との交差

第4章 フランス滞在と「廃墟」からの再生

第5章 色彩への憧憬

エピローグ

レンブラント、ルドン、クレー、マキシム・ラランスなどの版画も参考に展示されています。特にルドンは、駒井哲郎が

敬愛していたということもあり、作品数が多いです。『悪の華』より、のシリーズも、三菱一号館で開催された「ルドン展 秘密の花園」でも展示されていた「VI日の光(『夢想(我が友アルマンクラヴォーの思い出のために)』より)もありました。この作品、なんだか好きなので、1年に2度も出会えてよかったです。

 

また、第3章前衛芸術との交差では、詩人や音楽家と一緒に、「実験工房」という名前で活動し、詩画集の出版などで、文学や音楽との領域横断的な活動もしてました。詩人も誰もが知ってる大岡信谷川俊太郎なので、一気に身近に感じました。また、音楽とのコラボとして、「オートスライド」が流れてますが、実際には、作品の上下すらわからず、横浜美術館の皆さんで、上下を決めて、音楽も当時の音楽に近いもの(逆回転で再生したとか)をまねて、作成されたそうで、気合いが入ってました!

そして、広い広場に出ると、駒井哲郎の大きな写真が。「イケメン!」としか言えません。かっこよかったです。しかも、優しそうで、色々な音楽家や詩人とも仲良くできるのがわかりました。

人柄は、資料にあった、大岡信への手紙の文字と内容からも読み取れました。小さいけど、丁寧な字。

 

広場には、版画の技術法の説明や、実際に駒井哲郎が使用した道具、プレス機も置いてあります。駒井哲郎の版画の技術が多彩で、第1章と第5章では、同じ版画家の作品だとはわからないものも多かったです。どんどん、黒から豊かな色彩に、宇宙っぽい、メルヘンな世界になっていきます。

 

わずか56歳で亡くなられてるので、「銅版画の硝酸を使用した腐食反応の時にガスを吸ってしまったのかな」と予想したところ、その通りのようでした。腐食時間に気を配って、ずっと同じ部屋にいたそうです(そんなのだめ!by 元研究員の私)。今のように、授業で安全実習が重視され、安全器具も発達した時代だったら、、、と思うと残念でなりませんでした。

 

こんなに気合いが入った、美しくて変化のある展覧会なのに、ホームページが充実していないこと、グッズもポストカードは一種で、ポスターになってる作品のポストカードすらなく、寂しくなりました。横浜市、財政難らしいので、心配です。

私はもう一度、来館予定です。

 

www.museum.or.jp