いつからかヨコハマトリエンナーレが年齢の基準になってきているMooiです。
もう7月の話になってしまい恐縮ですが、3年に1度のヨコハマトリエンナーレ(以下、ヨコトリ)に行ってきました。今年のテーマは、「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」です。
概要
※10/2(金)、10/3(土)、10/8(木)、10/9(金)、10/10(土)は21:00まで開場
※会期最終日の10/11(日)は20:00まで開
いつものヨコトリと違い、日時予約制で鑑賞者が少なく、ボランティアさんたちもいらっしゃらなかったので、お祭り感はありませんでしたが、その分、ゆっくり鑑賞できました。初めての海外のディレクターユニット「ラクス・メディア・コレクティヴ」によるトリエンナーレでしたが、新型コロナの影響でインドから来日できないので、リモートで指示を出されて、開会できたとか。
開催に際して、ラクス・メディア・コレクティヴは以下のようにメッセージを伝えている。「世界が変革のときを迎えているいま、その先陣を切るトリエンナーレとなった。困難な時代の癒やし、そして変革の助けとなるアートの力を提示する場になると自覚している」。
▼美術手帖さんより
▼イヴァナ・フランケの手による《予期せぬ共鳴》
工事中かと思ってしまいました。
▼ニック・ケイヴ《回転する森》
会場に入って、最初に目に入るキラキラ作品。お祭りの飾りみたいでとっても綺麗ですが・・・。
▼銃が隠されていました。まさに今のアメリカを象徴しているような作品。
暗い作品が多いが、本当に暗いのか。「光の破片」につながる暗さなのか。
▼赤いインクが徐々に消されていく作品。会期始めに見たので、今はほとんど白い状態なのかも。気になります。
今回のヨコハマトリエンナーレ2020は、「光の破片をつかまえる」と言ってる割に、作品が全体的に暗いです。戦争、震災や原発はもちろん、ビキニ沖で起きた原爆実験を扱った映像作品、環境問題を扱った作品が多く、未来が不安になります。
しかし、本当に暗いだけかと言うと、延々とこのような暗い作品を見続けているうちに、このような過去の歴史や事件について、アートを通じて知る、そして忘れないことで、「光の破片(破片は時に刃物にもなるけれど。)」となる未来につながるのかもしれない、と思えてきました。
佐藤雅晴さんの作品に見る「生と死」
暗いだけではない作品もありました。
佐藤雅晴さんの遺作「死神先生」や《now》との再会。
▼この展示の仕方が美しかったです。
実は私自身は、KEN NAKAHASHIさんでの展示以上の展示は無理だろうと思っていたのです。でも、そんなことはなく、会場会場で新しい印象を届けてくれるのが佐藤雅晴さんの作品(映像も含めて)の特徴だったことを思い出させてもらいました。
佐藤さんの作品には、丁寧な解説とともに作品も印刷されている紙面が設置されています。みなさんおひとりおひとりが、佐藤さんの「死神先生」と言う作品と家でも向き合えるようになっています。
▼《now》時計の針は一本だけです。今だけを見つめる時計。迫ってくる死に対し、常に「今」を見つめ続けた佐藤雅晴さんの「生」への思いが伝わってきます。
▼うまくまとめられないままですが、大好きな佐藤雅晴さんが他界されてしまい、生きることを含め、いろんなことを考えさせていただきました。KEN NAKAHASHIで開催された「死神先生」展の写真もあるので、横浜美術館での展示と比較してみてください。作品は生きている、生きているから、展示場所に応じて、変化する。そんな気がしました。
移動は特製の傘で
▼日差しはほとんどなかったのですが、紫外線対策も兼ねて、会場で貸してくださる素敵な色合いの傘をさして、横浜美術館からプロット48へ徒歩移動。プロット48のスタッフの方も「この傘、販売してくれたら、私も購入したいです〜。」と盛り上がりました。こういうスタッフさん、ボランティアさんとの会話もヨコハマトリエンナーレの醍醐味ですが、今年はほとんどなくて寂しかったので、嬉しかったです。
新型コロナを忘れさせてくれた体験作品!!最高デス(半沢直樹の大和田取締役を意識)!
印象に残った作品が多すぎて、正直、作品名も覚えてなかったりするくらい。
▼岩井優《彗星たち》
2011年の原発がテーマだと思うのですが、マスクについての言及など、まさに今の状況に通じるものもあり、どきっとしました。
▼ズザ・ゴリンスカ《助走》
助走するには、こんなに凸凹なところを走らないといけないってことかな。跳ぶ前は大変。
▼エヴァ・ファブレガス《からみあい》
手をアルコール消毒した後、触ることができます。ちょっと固めの高反発クッションみたいな、腸のような作品(押してもアレは出てこないので、ご安心を。)
▼新井卓《千の女のための多焦点モニュメント》
▼陳哲《パラドックスの窓》
家の窓に映る映像が面白い。
▼川久保ジョイ《ディオゲネスを待ちながら》
川久保ジョイさんの作品は、昨年から何度かお見かけする機会があり、毎回、細かい部分まで気にかけてしまい、ついつい時間をかけて見てしまいます。白いチョークのようなもので、歴史が書かれています。ところどころに戦争も。大原美術館で見たエル・グレコの作品の世界を思い出しました。
▼川久保ジョイさん自ら、作品や、今後の展開について、説明してくださっています。
時間予約制。キャンセルできないことに注意!
動画やバーチャルツアーが充実
飯川雄大さんの作品予約(終了)
最近、ヨコハマトリエンナーレ2020の「バーチャルツアー」ができ、高齢や体が不自由出迎えない方、コロナ禍で泣く泣く来訪を諦めた方も楽しめるように配慮されています。このようなバーチャルツアー、今回だけでなく、次回以降も続けていただけると嬉しいです。
希望なのか武器なのかわからない「光の破片」を探していく現在
コロナ禍で最初に開催した国際的な展覧会と言うことで、正直、心配していました。感染者を出したら、開催を決定した方々が責められるのではないか、と。ただ、ヨコハマトリエンナーレのある年は、なぜか自分のキャリアの転換点に当たる年なので、「早く見たい」と言う思いが 強く、開始早々、向かいました。昨年、とてもラッキーなことにラクス・メディア・コレクティヴの来日トークイベントに参加することができ、今回のヨコハマトリエンナーレへの心意気を聞くことができました。今までと全く違うヨコトリになる!というわくわくした気持ちでトークイベントから帰った日を思い出します。
実際に行った今、やっぱり、わくわくさせてくれ、そして何より、過去の戦争、震災、環境破壊は、今に影響を及ぼし、暗い影を落としていること、そして、その影を生かして、希望なのか武器なのかわからない「光の破片」を見つけていくのが、今の時代を生きる私たちの使命なのかもしれないと感じました。
▼参加できた「美術館と国際展をめぐる連載講座第2回」の動画を見つけました。この時は、来日可能だったのですが。。。