アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

ラファル前派の軌跡展@三菱一号館美術館 2019年6月9日(日)まで(久留米市美術館、あべのハルカス巡回!)

三菱一号館美術館で開催中の「ラファエル前派の軌跡」展のブロガー内覧会に参加してきました。

開催期間は2019年3月14日(木)〜6月9日(日)です。

巡回の予定は、下記のようになります。

prb2019.jp

mimt.jp

はじめに、この展覧会、ラファエル前派だけに注目して向かうと損をします。

展覧会入り口で、子供用に配布されてるジョン・ラスキンにまつわる人々というフライヤーがあります。現地では読む時間が取れないと思いますので、リンク先より読んでから向かうと、3倍は楽しめるのではないかと思います。

 この展覧会の正式なタイトルは「ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡」展なので、ラスキンが中心で、ラスキンが関わったひとたちへのラスキンの社会思想がラファエル前派やウィリアム=モリスまで広がっていく流れを展示している展覧会なのです。ラスキンは数々の名言を残しているので、「あの言葉を言ったひとか」と思われる方も多いかもしれません。

meigen-ijin.com

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老年のジョン・ラスキン

ギャラリートークでは、今回の展覧会ご担当の野口玲一学芸員青い日記帳主宰のTakさんがご登場。

驚いたのが、今回の展覧会、ラファエル前派を全面に推しているようで、実は、19世紀の美術評論家・社会思想家ジョン・ラスキン生誕200年がメインらしく、野口さん曰く、ラスキンは批評家だけでなく、本人が作家でした。こんなにラスキンの絵を見る機会はありません。」とのこと。

Takさんが「さすがラスキン展!」と合いの手を入れると苦笑されてましたが、この展覧会、お二人のお写真の横をみてもわかるように、「第1章 ラスキンターナーラスキンターナー展。。。)

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三菱一号館美術館 野口玲一学芸員とTakさん

野口学芸員が、ラスキンは社会思想家。当時はマルクスに相当するほどの社会思想家だった」とおっしゃってました。

また、日本の洋画家や作家にも影響を与えており夏目漱石が描いている女性はラファエル前派の影響を強く受けていたり、青木繁は、今回展示されているバーン=ジョーンズの横長の作品に影響を受けて描いた「海の幸」があります。私もあ、「ブリヂストン美術館で見た青木繁のあれに似てる」と感じたので、バーン=ジョーンズの影響を受けてると知り、スッキリしました。青木繁に影響を与えた絵がどの絵なのか、ぜひ探してみてくださいね。

 

 展覧会全体の構成は、

と、ラファエル前派だけでなく、イギリスを代表する画家ターナーからウィリアム=モリスまで、幅広い作家と活動を扱っている展覧会なので、かなりお得です。お得度を楽しむためにも、ぜひ、ラスキンの人間関係はチェックしてくださいね。

第1章 ラスキンターナー

こちらでは、最初からターナー作品が並びます。1999年に初の海外旅行先として、イギリスを独り旅したのですが、その際、美術館を巡ると、ターナー展が開催されており、「ターナーって、誰?ぼんやりした絵だなあ」と思ったものです。それが、年を重ねるにつけ、そのぼんやり感にイギリスを思い出し、今ではイギリスに行くと、ターナーの作品を見てしまい、「イギリスに来ている」と確認するほどに(汗)。

そんなターナー作品を日本でも見られる数少ないチャンスです。

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カレの砂浜ー引き潮時の餌採り 1830年

また、この章は、この展覧会の裏タイトル(!?)「ラスキン」展を満喫できるほど、ラスキンの作品がたくさんあります!

 その中でも特に好きだったのはこの作品です。この展覧会で1番目を奪われ、何度か戻ってまで見てしまいました。

一瞬、写真かと思うほどの写実性。実際のルーアン大聖堂でも、この渦巻レリーフのような経年劣化した箇所があるのでは?と思うほどです。

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渦巻レリーフルーアン大聖堂北トランセプトの扉(*ブロガー内覧会にて、許可を得て撮影)

 ラスキンは自身の素描論でも、「自然をよく見て描きなさい」と言ってるそうで、自身も対象をよく見て描いています。

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ラスキンの作品 

景色などの背景もしっかり丁寧に描いているのが特徴だそうで、その流れがラファエル前派が植物や岩や川などの自然を丁寧に写実的に描いていることにつながってるそうです。

渦巻きレリーフは、とても魅力的なゴシックのモチーフだと思ったので、先日のノートルダム大聖堂火災について、備忘録を書いた際にも載せてしまいました。

mooi-desu.com

第2章 ラファエル前派同盟

ポスターにも使われてるロセッティの作品などは第2章にあり、青壁の部屋にあります。この青壁の部屋、なんと全て撮影OKです!

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ジグザグに展示されていて、広く感じる空間です。

力強い顔立ちの女性を描くロセッティ。顎の発達が悪くて歯列矯正したことのある私はいつも、「よく噛めそうな顎で少し羨ましい」と思ってました。そんな女性が実在していたことを初めて知りました。ジェイン・モリス。え?ウィリアム・モリスの奥さん?そのようですが、ロセッティと不倫していたようです。

最近、画家の不倫には少し慣れてきたので、その話題からは離れ、ジェインとロセッティの絵の中の女性の強さは独特のものがあり、ただ美しいだけではない、何か心惹かれるものがあります。顎だけでなくて(友人も顎が気になっていたけど)。

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ジェイン・モリス

見ているだけで辛くなった作品は、ミレイの「結婚通知ー捨てられて」。タイトルからして悲しいのに、女性の表情がなんとも言えません。自分は婚約破棄されたのに、友人の結婚のお知らせが届いたようです。本当に悲しいと涙も出ないもので、絶望的な気持ちになります。「大丈夫、変なのと結婚しなくて良かったよ」と励ましたくなります。

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結婚通知ー捨てられて ジョン・エヴァット・ミレイ 1854年

 第3章 ラファエル前派周縁

 第3章ラファエル前派周縁で気になったのは、この2作品。両方ともごてごてしていなくて、私好み。ハントの作品は真面目に丁寧に描いたように感じる作品が多いです。

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ヨーロッパカヤクグリ(イワヒバリ科)の巣 ウィリアム・ヘンリー・ハント 1840年

 

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母と子(サクランボ) フレデリック・レイトン 1864-65年頃

 

 第4章 バーン=ジョーンズ

こちらでは、私が説明することもない巨匠、バーン=ジョーンズの壮大な作品がずらっと並び、額縁もゴージャスになり、ラファエル前派の青壁部屋と同様、額縁まで見入ってしまいます。

そんなバーン=ジョーンズの作品で気になった作品は、この2作品。

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金魚の池1861-62年

金魚の池に脚を入れる女性。Dr.Fishではないので、脚の掃除はしてもらえませんが、なんとなく、許せてしまうような寂しいのか、ぼーっとしてるのか、わからない表情。

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書斎のチョーサー 1863年

チョーサーイングランドの詩人なのですが、私が見たのある肖像画ではヒゲのおじさんだったので、このかわいらしい、うたた寝中のチョーサーに魅力を感じました。全体的に薄い色でまとめてあるのも、他の作品と違って、親近感が湧きます。また、カリグラフィーを習っていた身としては、様々なカリグラフィーの書体に囲まれた部屋は「羨ましい!」の一言です。

第5章 ウィリアム=モリスと装飾芸術

ラスキンは、自然観察だけでなく、美術における手仕事の重要性を説き、ウィリアム=モリスの活動へとつながっていく。

第5章 ウィリアム=モリス装飾芸術では、人気の柄「イチゴ泥棒」(1883年)だけでなく、家具やステンドグラスの作品もあり、正直、驚きました。

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3人掛けソファ モリス商会

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a.巻物を持つ天使(左)b.巻物を持つ天使(右) モリス・マーシャル・フォクナー商会

 今回の展覧会は、「ラファエル前派の軌跡」展が正式名称なので、ラファエル前派が始まる前のターナーラスキンに始まり、その後のウィリアム=モリスの活動にまで広がる、幅広い展覧会となっています。ラファエル前派が好きな方はもちろんですが、なかなか見られないラスキンの作品を楽しまれるのもおすすめです。私は内覧会前にも1度、来館していましたが、1度では全く消化しきれないほどのボリュームでした。

 

後期は混雑が予想されるので、早めのご来館をおすすめします。青壁部屋は写真撮影OKなので、混んでいないときにぜひ!

mimt.jp

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