アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

「あの人に会いに 穂村弘対談集」穂村弘 を読んで

昨年からまた、詩人の穂村弘さんに夢中である。

前回、穂村さんに夢中になったのは、

「もしもし、運命のひとですか」が刊行される直前であろうか。

もしもし、運命の人ですか。 (角川文庫)
穂村 弘
KADOKAWA (2017-01-25)
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この本を読んで穂村弘さんのご結婚を知り、悲鳴をあげた女性ファンが多かった、という、ある意味、伝説のエッセーである。私も最後にびっくりしたけど。
幸い(?)、このエッセーを読む前に、
「世界音痴」と「現実入門」を読むことができ、独身時代の穂村弘さんのへなちょこ具合を知ることができた。40過ぎまで実家にいて、ベッドでチョコパンを食べてパンのかすがあるような。。。でも、筋トレは欠かさず、筋力隆々とか。
 
世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)
穂村 弘
小学館
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現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫)
穂村 弘
光文社
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 3月8日に下北沢B&Bで開催された、穂村弘さんと東直子さんのトークイベントは特に面白かったので、少し記しておく。
 
一番印象に残った言葉は、
「憧れは人を狂わせる」
現に穂村弘さんは対談中、谷川俊太郎さんのおでこに触れてしまったそうだ。その証拠写真(本に掲載すると炎上の恐れがあるので掲載していない)を特別に公開してくださった。
また、これも憧れゆえと感じたのが、「クリーニングに出せないジャケット」。サイン会で、穂村さんが張り切って、ペンを振ったところ、銀色のインクが、下ろしたてのコムデギャルソンのジャケットに飛んでしまったそうだ。それを見て、一緒に参加していた宇野亜喜良さんがさっさっと、トカゲとケシの花を描いてくださったそうで、それはとてもササッと描いた様には見えない芸術的な作品で、穂村さんは「クリーニングできないジャケット」と困りつつも、腕を挙げて見せながら、イベント会場を廻って、見せてくださった。こういう姿がファンにはたまらないのであり、ファンを大事にしてくれてるところと自慢したい気持ちとが、とても微笑ましくかわいらしかった(自分より一回り以上も年上の方なのに)。 

 

そんなトークイベントでもチャーミングな穂村弘さんが「よくわからないけど、あきらかにすごい人」と対談した本が、今回のブログのタイトルにもした「あの人に会いに 穂村弘対談集」である。 

あの人に会いに 穂村弘対談集
穂村 弘
毎日新聞出版 (2019-01-31)
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「よくわからないけど」というフレーズは不要なほど「あきらかにすごい人」ばかりの対談集である。
谷川俊太郎(詩人)
横尾忠則(美術家)
荒木 経惟(写真家)
萩尾望都(漫画家)
佐藤雅彦(映像作家)
高野文子(漫画家)
甲本ヒロト(ミュージシャン)
吉田戦車(漫画家)
 
漫画家が一番多いのが、穂村弘さんらしい。
最初の谷川俊太郎宇野亜喜良横尾忠則という並びがすでに伝説担ったる方々ばかりで、読んでいても、一言一言に重厚感を感じた。
谷川俊太郎さんが、求められたものに合わせて詩を作ってるという話には驚いた。詩人て、もっと自由なイメージだった。自分が思いついたまま、詩を作ってるひとたちだと勝手に思っていたので。
 
谷川 このごろは、舞台で「鉄腕アトム」を歌ったりもしてますよ。
穂村 それはもう、みんな大喜びでしょう。
谷川 詩の朗読より拍手が多いのが腹立たしいくらいでね(笑)
絶対、これ、ほんとに腹立たしいんだ、って感じたところ(笑)。
その後に、
谷川「文学としての詩」は必要とされていませんね。(続く)
とおっしゃってるし。
「詩というのは草花と同じように読んでほしい」
この言葉に、最近、読まれなくなっている詩に対する、谷川俊太郎さんの、氏に対する人々の接し方への願いみたいなものを感じた。
 
宇野亜喜良さんからも、谷川俊太郎さんと同じようなプロフェッショナル感というか、印刷の条件、作品のテーマなどの条件や制約を受け取って、宇野亜喜良さんが作ることで、最終的には宇野亜喜良さんの作品になるというのが、共通している。自由だけでは作品は生まれないのかもしれない。
横尾忠則さんも、この本の装丁がすぐに「横尾忠則さんだ」とわかるように、作品と作家がすぐに結びつくアーティスト。
それなのに、
横尾 表現のオリジナリティーなんて必要ないんじゃないかな。
とおっしゃってる。狩野派を引用されて、オリジナルに拘ることを揶揄されてた。
最初のお三方だけでも、何かを得られる対談集と言ってもいいかもしれない。それがあと6人続くのだから、一気に読むのは難しかった。

また、谷川俊太郎さん、横尾忠則さん、萩尾望都さんが「集合的無意識」というフレーズを使っていた。これが意味するものは何なのか、今もずっと考えている。

普段、対談集はあまり読まないジャンルの本だけど、この本は、今生きている方々の生きた声を届けているので、読んでみると、対談相手それぞれの方の作品が気になって、見に行ったり、読んでみたくなる。

 

「よくわからないけど、あきらかにすごい人」たち9人から、メッセージを引き出す穂村弘さんの言葉も素晴らしい。

 でも、トークイベントで、「コミュニケーションがかみ合わなかった時の苦痛は、原稿がうまく書けなかったときの落ち込みとは全く違う苦しさだった」

と仰っていて、穂村さんも私たちが仕事や私生活で感じてるような苦痛を味わってるんだ、と思ったら、少し気持ちが軽くなった。

 

若山牧水賞も受賞された穂村弘さんが、17年ぶりに世に送り出す最新歌集。名久井直子さんの手がけた装丁は9パターンあるので、実際に書店で購入するのがベストだと思う。

水中翼船炎上中
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穂村 弘
講談社
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