アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

【備忘録】「へそまがり日本美術」展 府中市美術館(~2019年5月12日まで)

1ヶ月以上前のことになりますが、府中市美術館の「へそまがり日本美術」展の講演会に行ってきました。2回目の講演会が4月27日に控えていたので、ネタバレはいけないだろう、と思い、2回目の講演会が終わったら、更新しようと思っていたところ、あっという間にGWも明けてしまいました。

備忘録ということで、あまりまとめられませんが、書いてみました。

2019年 3月16日[土]– 5月12日[日]
前期:3月16日[土]– 4月14日[日]
後期:4月16日[火]– 5月12日[日]
fam-exhibition.com

 ▼徳川家光の作品(撮影許可エリア)

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▼3月下旬だったので、桜が咲き始めていました。来年は満開の時期に訪れたい。

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人気学芸員の金子信久さんの講演に参加しましたが、30分ほど前には、満席でした!

 ▼講演会の案内も《福禄寿図》でかわいい。

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まず、府中市美術館が特設サイトを設けてるのは珍しいことだそうです。公立の美術館や記念館は、あまり特設サイトを設けてない印象が(自治体の予算にもよるのだろうけど)。

▼重版になったという、かわいい、小型の図録。銀座蔦屋書店でも見かけました♪

へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで

 

来館前に「へそ展日記」を読もう!

金子さんのおすすめは、「へそ展日記」。

へそ展アフターに低山登山のススメ

府中市美術館の近くには、都立浅間山(せんげんやま)公園があり、標高79.6メートルの浅間山を上る(低いけど)ことができるそうです。

ほとんどの方が府中市美術館のためだけに、府中駅などからバスや徒歩15分ほどかけてやってきてると思いますので、ぜひ、浅間山登山もどうぞ。

 

へそまがりの美術とは

へそまがりの美術とは、

「きれいとは言えないもの」

「完璧ではないもの」

「不恰好なもの」

「不完全なもの」

などに、なぜか心惹かれる 「へそまがりの感性」だそうです。 

たとえば、「禅画」は、ありきたりの常識を超えたところにある境地、ものの見方を表現していますが、大声で笑ったり叫んだりしている絵も。ところがそこに、幽玄な禅の奥義があるそうです(私にはまだまだ理解には程遠い領域です)。

 岸駒《寒山拾得図》敦賀市立博物館蔵  では、「気持ち悪さ倍増」の寒山と拾得が。

▼公式サイトより引用させていただきましたが、印刷すると、《寒山拾得図》の入った「苦い」絵づくしの六角返しが作れます。

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fam-exhibition.com

後期に展示される予定の長沢芦雪 《猿》(講演当時は「奇想系譜」展に展示されていたので、そちらで鑑賞)は、 イヂワルそうな顔をしています。

へそまがりは、「ヘタウマとは違って、上手な絵のへそまがり」そうです。

長沢芦雪 《郭子儀図》では、孫が数十人いたという話から、本当に子供を数十人描いていて、面白い構図になっていますが、子供たちの表情が豊かに描かれており、決して、へたうまではないことがわかります。

 また、小出楢重 《めでたき風景》は、一見、おかしな絵ですが、キュビズム (ブラック)とフォービズム (マティス)の影響を受けてるそうです。

 続いて、俳画についても説明してくださいました。俳画とは、俳諧の世界で描かれた絵のことです。「俳」は「たわむれ」を表し、「諧」は、「 やわらぐ、おどける」を表しているとか。 

遠藤日人 《カエルの相撲図》には、ゆるい魅力が詰まってるそうです。

技術やわかりやすさでみせる世俗的、大衆的な表現を嫌う へそ曲がってる「文人」は、南画を好んだそうです。

 そんな作品が、岡田米山人 《寿老人》。また、展覧会に展示されていませんが、行方不明になってる《松齢鶴算図》という作品もあるそうです。

「素朴」の味わいを表現する 

拙く見えるものには、味わいがあるというお話もありました。描き手の意図 とは違う感じ方は、 間違いではなく、頭で感じることは、その人にとっての真実である、とのこと。禅にも通じそうですね。

伊藤若冲 《伏見人形図》や三岸好太郎 《二人人物》が該当するようです。

bunka.nii.ac.jp

 

ヘタウマ

 いわゆる、ヘタウマに該当するのが、展覧会の後半に展示されている、湯村輝彦蛭子能収

 

お殿様の作品

「家光は当時のウサギの描き方を無視しています」とバッサリ。

今回、話題になっている、《木兎》と《梟》の絵を多く描かれるそうなので、お気に入りの題材だったのかも?

家光の御用絵師として、狩野探幽、安信、尚信がいたにも関わらず、彼らの技法に従わず、家光は、リアリズムを目指して、うさぎや鳥の毛のふわふわ感などを丁寧に描いているそうです(言われてみれば)。

家光の賛は、沢庵が書いてるので、家光の絵には、禅という世界があったのでは?という予測もしてくださいました。

 

大正9年には、今回の「へそまがり日本美術」展で一番の話題になった、家光の木兎の絵を掲げた、「木兎茶会」と呼ばれた茶会もあったそうですが、残念ながら、その時に使われた絵は見つかってないそうです。 家光の絵は、なんと、日本画史の基礎資料となっている、『古画備考』浅岡興貞(狩野栄信の次男)にも紹介されてるそうです!日本画の歴史に残ってる名作(?)なんですね。

また、あの豊臣秀吉は、「 セミが羽化する絵」を描いたそうで、上に立つ人の感性は、常人とは異なるようです。

 金子さん曰く、「本人たちも上手い下手は理解していたのに、うまくかけないけど、魅力と価値はある、と思っていたか、将軍だからいいのだ」と思っていた可能性もあるそうです。

「下手で何が悪い?」様式と呼びたくなるような絵の魅力、という言葉で締めてくださいました。

 

 ▼講演会の参加者の方が作られた、家光の「ぴよぴよ鳳凰」、「木兎」「木兎」。クオリティーの高さに、撮影者続出!

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まとめ

 

「きれいとは言えないもの」、「完璧ではないもの」、「不恰好なもの」、「不完全なもの」などに、なぜか心惹かれる 「へそまがりの感性」を感じる作品を集めたのが、今回の展覧会。

また、来館前には「へそ展日記」を確認して、美術館周辺も楽しみましょう〜。