好きなアーティストさんが他界されるということ
アーティスト佐藤雅晴さんが2019年3月9日に他界されました。一番好きな現代芸術の作家だったので、ショックのあまり、佐藤さんについては何も書けないまま、月日が流れてしまいました。この記事も、3月に書いたものの、下書きに保存したまま。やっと手を加えたものの、まだしっくりこない。ただ、大晦日にあたり、好きなアーティストのことを書いてみたいと思います。
今年の2月、3月には、佐藤雅晴さんの展覧会が、都内で3つ、開かれていた。多くのひとに佐藤さんの作品をご覧になっていただきたいと思い、twitterではひたすら、Retweetを繰り返した。鑑賞された方のtweetはどれも、佐藤さんの作品を満喫されてるご様子でした。同じ作品を見て、良かった、とつぶやいているひとがたくさんいて、友達がたくさんいるような気になったのを覚えています。
▼お茶の水近くのTOKASで開催された「霞はじめてたなびく」で展示された佐藤雅晴《福島尾行》
ご体調の都合で、残念ながらトークイベントへのご参加は無理でしたが、音の出ないピアノが演奏するドビュッシーの「月光」と《福島尾行》の映像。そして、TOKASの古びたビル。全てが一体化した、素晴らしい空間、作品でした。
「霞 はじめてたなびく」
— Berlaarstraat (@Berlaarstraat1) 2019年2月22日
七十二季節の霞始靆をタイトルにした展覧会。トークに佐藤雅晴さんは参加されないけど、この季節はどんな人でも体調を崩しさやすい。
昨日facebookに投稿されていたことを確認させていただきました。
霞始靆のような大気汚染の強い季節は室内で過ごしていただきたいです。 https://t.co/pN4WWlrkYt
また、交流室では、佐藤雅晴さん、西村有さん、吉開菜央さんの作品が交流していました。
昨日は奇跡的な日だった。原美術館で作品を拝見し魅了され、「東京尾行」ではないけど、検索しまくって過去作品、youtubeの動画を拝見していた佐藤雅晴さんの作品を、室内に1人の状況で鑑賞する瞬間を得られた。
— Berlaarstraat (@Berlaarstraat1) 2019年2月23日
今月は新宿、六本木でも会えるけど、この空間がとても好き。https://t.co/HPntPAU0fE pic.twitter.com/3UllOcy2z5
▼佐藤雅晴さんの闘病に対する気持ちも掲載されています。
一方、森美術館での「六本木クロッシング」では、大画面で《Calling》を鑑賞することができました。原美術館で見た時とは違う迫力、そして、周りの作品からの音や光とのコラボレーション。
六本木ヒルズのクロッシング展で展示されてる佐藤雅晴さんの作品、大画面でした。周りの作品の音にも負けず、クロッシングされてました。
— Berlaarstraat (@Berlaarstraat1) 2019年3月5日
原美術館で左の光景を見て、コーヒーの湯気とドラム洗濯機に、アムステルダム時代を思い出して涙が出たのを思い出しました。https://t.co/r4bnAYKv4S pic.twitter.com/aYCked456v
▼《Calling》が生まれたきっかけなども語ってくださっています。
そして、上記2つの大きな会場での展覧会に続き、新宿のKEN NAKAHASHI galleryでの「死神先生」。こちらは「おじゃまします」と入って行くような、新宿なのに、緑を介した日差しの差す、優しい空間でした。
この展覧会の会期中に、旅立たれてしまいました。佐藤さんの作品には飛行機がよく出て来ていたように思いますが、飛行機で天国に向かわれたのでしょうか。そんな気がする展覧会でした。
佐藤雅晴さんの作品に出会った頃
私が佐藤雅晴さんの作品を拝見したのは2010年。佐藤さんはすでに病魔に犯されていました。2009年に親しい先輩を癌で失い、父も癌になり、2010年、オランダの癌研究所から戻り、一番嫌いな病気が癌でした。
好きになったアーティストまで癌に苦しんでいるなんて。
癌の原因の研究をしていたため、癌の原因が無数に、しかも自分の中にあることを知ってるだけに、最初に感じたのは絶望でした。でも、一方で、末期の癌から復活して、97歳まで生きてくれた祖母もいたので、佐藤さんにもそれを願っていました。
今年2月頃でしょうか。佐藤雅晴さんがtwitterを始められ、私のアカウントもフォローしてくださいました。佐藤さんの《東京尾行》の尾行のように、多くのファンのtweetをRetweetされる姿は、まさに「トレース」「尾行」のようで、佐藤さんがまだPCまたはスマホを操作できる状態にいらっしゃることを嬉しく感じていました。
私もまた、佐藤さんを尾行していました。
Facebookでは、2人の画廊を営んでる方と繋がってるため、佐藤さんのFacebookでの内容が流れてくることがあったのです。
憧れのアーティストと知人一人を挟んで繋がってる。ファンとしては嬉しい限りでしたが、癌の進行を知ったのも、Facebookでした。
そして、主治医の死神のような態度に怒りが湧き上がありましたが、佐藤さんはその感情をも作品にされ、発表されています。
▼2020年の横浜トリエンナーレにも出展が決まった「死神先生」
▼KEN NAKAHASHI Galleryのあるビルの大きな窓、そして窓から見える木々ともよく合ってました。
ご他界後も続く展覧会
佐藤さんの初盆、追悼を兼ねた展覧会「I touch Dream」が、新宿のKEN NAKAHASHI Galleryで開かれました。オーナーの中橋さんは、佐藤さんとはプライベートのご友人でもあり、色々なお話を聞かせてくださいました。
▼生前は公開されなかった佐藤さんがドイツに渡られた頃の初期の作品。
モノクロで、他の作品がカラフルなのに比べ、静かな作品。
暗い作品なのかな、と思いましたが、最後、蛍のような明るい光に囲まれて進む主人公の様子には、なぜか希望を感じました。
中橋さんが佐藤さんの映像が引き立つように、あえて、ライトの数を減らしてくださっていました。一つ残ったライトは、作品の中で主人公が浴びている光のようでもあり、作品と呼応しているように感じました。
これからも佐藤雅晴さんの作品を尾行していく
佐藤雅晴さんの作品は、制作に非常に時間がかかるものが多い。つまり、作品数も非常に少ないです。ということで、これからも佐藤さんの作品の尾行をしていくつもりです。小さな展覧会でも見落とさず、ちょっとしつこく。
幸いなことに、佐藤さんは2020年も、尾行場所を置いていってくださっています。
DOMANI・明日展ー傷ついた風景の向こうに
会期:2020年1月11日(土)~ 2月16日(日)32日間開催
休館日:毎週火曜日(2月11日(火・祝)は開館、12日(水)は休館)
開館時間:午前10時~午後6時、毎週金・土曜日は午後8時まで
▼佐藤雅晴さんのご紹介も。
「DOMANI・明日2020—傷ついた風景の向こうに」が2020年1月11日から、国立新美術館にてスタートします。
— KEN NAKAHASHI (@kennakahashi) 2019年12月29日
佐藤雅晴の初期の映像作品「I touch Dream #1」と、最後の映像作品となった「福島尾行」が展示されます。
1月11日は入場無料です。是非、ご高覧くださいませ。https://t.co/bwnQj9zGV7
そして先日、ヨコハマトリエンナーレ2020にも、出展されることが報告されています!
ヨコハマトリエンナーレ2020「Afterglow - 光の破片をつかまえる」(2020年7月3日-10月11日)の開催概要が発表されました
— KEN NAKAHASHI (@kennakahashi) 2019年11月30日
アーティスティック・ディレクターはラクス・メディア・コレクティヴ
2019年3月9日に死去した佐藤雅晴が最後に残した作品も出品されることになりました pic.twitter.com/xgPkivZNjD
「死神先生」の作品それぞれについての解説も、KEN NAKAHASHI Galleryのサイトで紹介されています。ご一読されてからヨコハマトリエンナーレに向かわれると良いかも。
作品はYoutubeにも
佐藤さんのご好意で、私たちはYoutubeの佐藤さんのチャンネルで、いつでも作品に出会うことができ、ずっと尾行できる。いつでも作品に触れる機会を残してくださり、本当にありがとうございます。
そして、他の作品も物理的にも、クラウド的にも、しっかりと保管が進んでいるようです。そのように保管を進めてくださってる皆さんにも感謝です。
最後になりましたが、佐藤雅晴さんのご冥福をお祈りしています。今は穏やかな場所に、飛行機で、到着されていると信じています。