大きな美術館は苦手だったMooiです。
でも、アーティゾン美術館が3つの展覧会を同時に開催していると聞き、早速、土曜日朝一の枠に予約して、行ってきました。
新型コロナウイルス下でのアーティゾン美術館の方針を読んでから向かいましょう。
東京駅八重洲口から徒歩5分ほどで到着できるアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)。とても便利な立地です。
新型コロナウイルスによる感染がまだまだ落ち着かないですね。「withコロナ」と言われている現状、向かわれる前にはまず、こちらの「再開にあたってのお知らせとお客様へのお願い」をご一読ください。
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり
会期:2020年6月23日[火] - 10月25日[日]
開館時間 : 10:00 - 18:00*入館は閉館の 30 分前まで
休 館 日 : 月曜日 (8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
入場料(同時開催のすべての展覧会込み!):ウェブ予約チケット一般1100円、当日チケット1500円
会 場 : アーティゾン美術館 6 階展示室
主 催 : 公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
圧倒的な空間を生かした「ちゅうがえり」な展示
地元がトンビ凧で有名なので、入り口の展示には、懐かしさを感じてしまいました。
でも、「何、この足場!?」。入場した時の第一の感想。
▼《振り子 インスタレーション》、《湖ジオラマ》、《襖インスターレション》
日本の美術館の中とは思えない壮大な設備(もはや建築物です)。
ブレてしまう、前後に激しく動く「枝」と山。。。
▼《襖絵インスタレーション》
巨大な円形に囲むように設置されている襖と滑り台!!!
▼貝が今にも動き出しそうに見え、思わず写真を撮ってしまいました。
▼不穏な竜巻群
▼鑑賞者が体験できる滑り台。もちろん、私もワンピースでしたが、滑りましたよ!顔に風を感じた体験って、いつ以来だろう!気持ちよかった!
▼《皮トンビ》
昨年の瀬戸内国際芸術祭に行った際、公式ガイドブックで見ていたものの、こんなに大きかったのか!と驚きながらも、近づいてじっくり眺める。
瀬戸内国際芸術祭の間、春、夏、秋の3つの季節の間、野外に展示されていたそうです。大きな台風がありましたが、その時破損し、修復、その後、燻製して虫(?)などを除去して、瀬戸内国際芸術祭の地の気配をすべて消して、東京に運搬したそうです。初期とは色がだいぶ違い、濃い茶色になったそうです。
▼近くで見ると、キラキラしている。狸と思われる動物の表情が見る角度によって、違って見える気がしました。
▼至るところに皮があり、動物愛護の気持ちが強い人は拒否感が出てしまう展示かもしれない、とも感じました(私も毛皮は苦手なので、躊躇した)。
ただ、こういうのぞき窓風の展示光景があり、向こう側の人は何してるのかな、何があるのかな、という宝探しの様な楽しみがあります。
▼油断すると(?)、目が合ってしまう
会場には特に順番もなく、いえ、順番を付けられないような、自由な空間となっています。いつの間にか、同じ場所を何度も廻ってしまっていました。
▼旧ブリヂストン美術館時代からの所蔵品、ギュスターヴ・クールベ《雪の中を駆ける鹿》も鴻池さんの作品《隠れマウンテン》からの光の近くで見ると、初めて出会った作品の様に感じました。鹿も絵の中から走り出しそう。
▼《隠れマウンテン》には鼻と口が!!こわい(笑)
▼過去の展示の様子が壁一面に。
もちろん、昨年の瀬戸内国際芸術祭の様子も。
▼薄暗い展示室ですが、光が溢れています。
鴻池朋子さんの言葉
「人間は一匹の動物として一人一人全部違う感覚で世界をとらえ、各々の環世界を通して世界を眺めている。それらは一つとして同じものがない。同じ言葉もない。同じ光もない。 芸術がそのことに腹をくくって誠実に取り組めば、小さな一匹にとって世界は官能に満ち、やがて新たな生態系が動きだす。 イリュージョンを言語にすり替えず、日々出会うものたちをしっかりと手探りし、遊び、粛々と自分の仕事をしていこう。」(鴻池)
鴻池さんの言葉からは「多様性」「共存」などという言葉でなく、キャリアコンサルタントで学んだゲシュタルト療法の「今、ここ」に通じるものを感じました。「いつになったら新型コロナウイルスは収束するのだろう。」と先のことばかり心配していたので、「粛々と自分の仕事をしていこう」という言葉にはハッとしました。最近、在宅勤務で仕事をしていても上の空だったなぁ、なんて。
▼《風が語った昔話》たくさんの普通の人が話した光景がフェルトに留められています。毎日が物語なんですね。
ここでもキャリアコンサルタントで学んだ「ナラティブセラピー」を思い出したり。
▼上の写真の真ん中のお話。この方は津波を避けられたけど、注意してくれた消防士さんはご無事だったんだろうか。
▼アルフレッド・シスレー《森へ行く女たち》。まさにここに展示されるのにぴったりの作品。シスレーの描いた光景も普通のひとの普段の様子、女たちの会話。
この昔話の展示の奥に、《ドラえもんの歌on森吉山》というビデオアートがあり、鴻池朋子さんご自身が雪に埋もれて、大きな声でドラえもんの歌を歌ってくださっています。その歌い方が、子供の頃に歌ったドラえもんの歌で、なんだか心に沁み、何度か見てしまいました。
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感想
鑑賞中は夢中になってしまい、作品リストも読まず、ひたすら、ぐるぐる会場を巡っていました。滑り台から降りて風を感じたり、毛皮に触れて、びびってしまったり、とにかく夢中。「何だ、これは!」の連続で、岡本太郎さんの「芸術ってのは判断を超えて、
FLIPを「ちゅうがえり」とひらがなで見事に訳されたのもすごいと思いました。「宙返り」ではなく、「ちゅうがえり」。ゆっくりと「ちゅうがえり」して、混沌としてどこに立っているかわからないほど不安な現状を受け入れられそうな、そんな気がする展覧会でした。
今年は海外に行くことを諦め、大規模な展覧会を見る機会もなさそう、と思っていましたが、「そうだ!アーティゾン美術館があるじゃない!大丈夫!」と確信を持てました。再開、おめでとうございます。そして、再開してくださって、こんなにすごい展覧会を開いてくださって、ありがとうございます。