アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

【SOMPO美術館から巡回あり!】ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ

 夏至も過ぎ、いよいよ夏がやってきますね。今年の夏休みも海外旅行は難しいので、憂鬱な方も多いのでは。

そんな中、SOMPO美術館で開催のランス美術館コレクション「風景画のはじまり コローから印象派へ」の内覧会に参加し、ヨーロッパに思いを馳せてきました。

*許可を得て撮影させていただいております。

概要

会期:2021.06.25(金)- 09.12(日)

休館日:月曜日(ただし、8月9日は開館、翌10日も開館)

開館時間:10:00-18:00

日時指定予約優先(時間枠の定員に空きがある場合に限り、美術館受付で当日分を販売)

[blogcard url="https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/musees-reims-2021/"]

5章からなる展示です。

1章 コローと19世紀風景画の先駆者たち

2章 バルビゾン派

3章 画家=版画家の誕生

4章 ヴジェーヌ・ブーダン

5章 印象主義の展開

ランスとは?

フランスの首都パリから北東へ、特急電車で1時間弱にある街です。

ランスには世界遺産に登録されているノートルダム大聖堂、フジタ礼拝堂、そして、シャンパンの生産地として有名なシャンパーニュ地方にあり、コロナ前は、日本人観光客も多い街でした。街中の大部分はトラムで移動できるので、とても便利です。

このランス美術館コレクション展ですが、SOMPO美術館の前には名古屋市美術館で開催されていました。名古屋市とランスは姉妹都市なんですって(2017年より)!

名古屋市美術館鑑賞ガイドが子供向けにルビが振ってあって、わかりやすかったので、リンクを貼っておきますね。

各美術館の解説やガイドで楽しめるのは、巡回展の醍醐味ですね。

[blogcard url="https://tv-aichi.co.jp/reims2021/highlight/reims2021_guide.pdf"]

1章 コローと19世紀風景画の先駆者たち

フランスでは、「風景画」が認められたのは18世紀末だそうで、それまではローマ神話や聖書などを主題描とした「歴史画」がより高尚なものとされていたそうです。18世紀末以降、社会の変化や振興ブルジョワジーの台頭などによって、自然への関心、産業革命や都市化が進んだことによる田園風景への憧れなどもあり、風景がに関心が集まってきたようです。

今回の展覧会は風景画、特にコローの作品が本当に多いです!コローのファンの方は必見の展覧会だと思います。特に第1章は、コローの作品だらけで、嬉しかったです。

▼左)ジャン=ヴィクトール・ベルタン《風景》(1820)、右)ジョルジュ・ミシェル《森のはずれの藁ぶき小屋(羊飼い、砂州、農家)》(1795)

▼左)ジャン=パティスト・カミーユ・コロー《谷間を馬に乗って横切る人》(1843年、1872-73年に加筆)、右)ジャン=パティスト・カミーユ・コロー《突風》(1865-70)

《突風》では、強い風の中、踏ん張っている女性の様子がこちらにも伝わってくるようです。突風とは裏腹に、青と黄色の花々は穏やかな様子に見えます。

2章 バルビゾン派

第2章では、バスビゾン派が取り上げられています。パリから約60kmほど南東にあるフォンテーヌブロー森に集まった画家たちがバルビゾン派と呼ばれています。森に定住して、風景画を製作したそうで、写実的な点が特徴です。

こちらの二枚の絵はオランダの風景画に影響を受けたもののようです。《沼》では、沼地の緑や茶色が基調の中、女性の赤いスカートと白い帽子(民族衣装だと思われる)が目立っていました。夕方と思われる空のピンクがかった様子も穏やかです。《風車》は、オランダの風景画を研究した後、コンスタブル の影響も受けて描いた作品だそう。確かに雲の描き方はコンスタブルを思い出すかも!

▼左)テオドール・ルソー《沼》、右)ジュール・デュプレ《風車》(1811-1889)

[blogcard url="https://mooi-desu.com/entry/constable"]

最近、個人的な話なのですが、親の看病などでかなり疲れており、展覧会に行っても、以前ほど感情を揺さぶられることがなかったのですが、アルピニーの風景画には、子供の頃、家族で出かけた霧島の森など思い出し、しばし、見つめてしまいました。

▼左)アンリ=ジョゼフ・アルピニー《夜明け》(1890)、右)アンリ=ジョゼフ・アルピニー《晴天のサン・プリヴェ》(1886)

内覧会当日は曇り空でしたが、夏の空を思い出すような真っ青な空と分厚い白い雲が印象的で、心が少し晴れ晴れとしてくるような《ヨンヌの思い出、サン=プリヴェからブレノーへの道》にも出会えました。

左)アンリ=ジョゼフ・アルピニー《ヨンヌの思い出、サン=プリヴェからブレノーへの道》(1885)、右)コンスタン・トロワイヨン《ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道》(1856)

3章 画家=版画家の誕生

第3章の版画のあるエリアは区切られた小部屋になっています。版画の手法の説明もあり、版画に詳しくない私でも興味を持つことができました!

▼左)オーギュスト・ドラートル《朝》(1865)、右)ヨハン・バルトルト・ヨンキント《オランダ、マースラン村からの眺め》(1862)

小さな版画でも木々の葉の様子や雲の動きが伝わってくることに驚きました。

こちらの会場、わかりにくいのですが、この小部屋の奥の階段を降りて、第4章の会場に向かうようになっています。

階段には、ブーダンの作品に出てくる牛さんたちの案内が!

かわいい〜。

4章 ヴジェーヌ・ブーダン 〜ブータンの描いた空の中にいるような会場〜

この会場、まさにブーダンの描いた空の色。作品の中で作品を鑑賞しているかのような気分になれる、素敵な空間でした。 ブーダンはフランス北西部ノルマンディー地方のオンフルール生まれ。港町で育ったそうで、海や空の描き方が写実的です。描かれた雲は動いている化のようにも感じました。コローはブーダンを「空の王者」と呼んだほど、空模様を捉えた作品を評価していたそうです。

案内してくれた牛さんたちは、《水飲み場の牛の群れ》に描かれている牛さんたちだったんですね。一匹一匹、違う表情で描かれています。

▼左)ヴェジーヌ・ブーダン水飲み場の牛の群れ》(1880-95)、右)《ボルドーの港、バラカン埠頭の眺め》(1874)

《ベルク、船の帰還》は、近くで見ると、そこまで光を感じないのですが、隣の部屋から見ると、光り輝いて見えたので、の部屋に移動してからもご覧になっていただきたい作品です。

▼左)、ヴェジーヌ・ブーダンボルドーの港、シャルトロン埠頭の眺め》(1875)、右)ヴェジーヌ・ブーダン《ベルク、船の帰還》(1890)

5章 印象主義の展開

第5章では、お馴染みの「印象派」の作品が展示されています。クロード・モネ、ピーエル=オーギュスト・ルノワールカミーユピサロなどの作品が溢れています。一年半にも及ぶコロナ禍に疲れた心に沁み、心が温かくなったような気さえしました。

《ノルマンディーの海景》は、私のイメージしていたルノワールとは少し違う趣の作品。少し荒々しい海を感じます。右側はルノワールらしい、柔らかなタッチです。

▼左)ピーエル=オーギュスト・ルノワール《ノルマンディーの海景》(不明)、右)ピーエル=オーギュスト・ルノワール《風景》(1890)

一昨年、訪れた際は一時間以上並んで入館できたルーヴル美術館。以前は、こんなに閑散としたエリアだったのですね。哀愁すら漂っています。

印象派ではシスレーが一番好きなのですが、こちらの作品もシスレーらしい、自然と人間の共存を感じるような作品。描かれているのは、妻と娘だそうです。そう思って見ると、愛らしく感じてしまうのが不思議です。イギリスの光景らしく、内陸のヨーロッパよりも少し岩っぽい場所にある停泊地のように見えます。海や船よりも、大きく描かれた木が印象的です。船と違い、どこにも移動しない、どっしりとして木に思いを馳せたのでしょうか。

▼左)カミーユピサロルーヴル美術館》(1902)、右)アルフレッド・シスレーカーディフの停泊地》(1897)

全国に巡回中

ランス美術館は現在、改装工事中で、北九州市立美術館に始まり、1年以上かけて日本中を巡回しているようです。移動制限のあるコロナ禍では本当にありがたいですね。

SOMPO美術館以降の巡回は下記の通り。

新型コロナの影響で会期がずれる可能性もありますので、詳細は各サイトでご確認ください。

宮城県美術館

会期:2021918日(土)~117日(日)

静岡市美術館

会期:20211120日(土)~2022123日(日)

茨城県近代美術館

会期:202229日(水)~327日(日)

所感

絵から溢れる光はまさに西ヨーロッパの光でした。新宿にいるのを忘れてしまうほど、ヨーロッパに行った時のことを思い出すような風景画。

発表された当時は宗教画よりも地位が低かったそうですが、そんなことがあるでしょうか。

旅先の風景だけでなく、空気や湿度、気温までも思い出させる風景画には、小旅行を楽しませてもらえました。

また旅に出られるよう、健康に気を付けて日々を過ごしていこうと、気を取り直せた展覧会でした。

 

10年前、ランスのサン・レミにて(一人旅なのでほとんど自分の写真はないのですが、ピントがずれた写真ばかりでした)