アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

【上野駅または鶯谷駅】渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画― 【緊急事態宣言中により会期途中に閉幕】

今年、見逃してはいけない展覧会のひとつが、ついに始まりました!

東京藝術大学美術館で開催中の「渡辺省亭 ―欧米を魅了した花鳥画―」です。私が渡辺省亭を初めて知ったのは、2018年の加島美術さんの企画「SEITEIリターンズ!!ー渡辺省亭展」でした。日本画山種美術館根津美術館で少し鑑賞する程度だったので、全く知らない状況で見に行き、加島美術さんでギャラリートークセッション(下記参照)を拝聴したのでした。その時に初めて、渡辺省亭(わたなべせいてい)の描く花鳥画に興味を持ち、自分の住んでいたアムステルダムアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)にも所蔵、展示されていることを知り、当時、何も知らずに「あ、日本の絵だ。」と言って、画家の名前を見ずに、レンブラントフェルメールに向かった時の絵が、渡辺省亭だったかもしれない、と気付いたのでした。自分の見る目のなさにがっかり。今、少し検索したところ、アムステルダム国立美術館だけでも『省亭花鳥画譜』を含め、178作品も所蔵されているようです。

[blogcard url="https://www.rijksmuseum.nl/en/search?q=Seitei%20Watanabe&p=1&ps=12&st=Objects&ii=5"]

今回の展覧会のタイトル「―欧米を魅了した花鳥画―」の通り、アメリカのメトロポリタン美術館、クラーク美術館からも作品が来日しており、欧米での人気の高さの一端を垣間見ることができます。

概要 上野駅と同じくらいの所要時間で迎える鶯谷駅、少し遠いですが根津駅を利用すると密回避に。

会期:2021年3月27日(土)~5月23日(日)

休館日:月曜日※ただし、5月3日(月・祝)は開館

開館時間午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)

*予約不要ですが、内覧会に多くの報道陣が参加されていたので、早めのご来場をおすすめします。

[blogcard url="https://seitei2021.jp/"]

*許可を得て撮影させていただいております。

最初の部屋の映像で渡辺省亭の人生を知ってから作品を見ていこう!

渡辺省亭の人生について、映像で紹介してくれている部屋が最初の部屋になります。内覧会では時間の関係もあって、あまり長い時間、見ている人は少なかったのですが、私のように画家の人生を年号と作品で追っていくのが苦手な人にはとってもありがたい映像でした。ついつい最後まで見てしまい、ほとんど人がいなくなってました。渡辺省亭(1852-1918)は明治時代に活躍した日本画、挿絵画家。歴史画家・菊池容斎(きくちようさい)に弟子入りをしたものの、3年間の修行はほとんど文字を書く練習(書も展示されていますが、見事です!)で終わったとか。菊池容斎の画集を模すことで技法を習得し、明治2年(1869)年にはイギリスのエディンバラ公へ献上する画帖制作に参加(海外向けの作品でデビューしてたんですね。)。 1878年のパリ万博で実力を認められ,パリに遊学。印象派の画家たちとも交流。華々しい経歴にも関わらず、画壇と距離を置き、弟子もとらなかったそうです。孤高の画家という感じですね。

迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)の七宝焼きの原画が展示されています。 迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)では七宝焼きの特別解説も行われてるので、合わせて向かいたい!

迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)の装飾は、渡辺省亭の原画を七宝工芸家の濤川惣助が制作したものです。最高峰と言われる七宝焼の原画が、迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)に近い形で展示されていて、こちらも落ち着いて鑑賞できるスペースになっていました。

3年ほど前に迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)に訪問し、渡辺省亭の原画(上の写真)を七宝工芸家の濤川惣助が制作した七宝焼を拝見しましたが、焼き物には見えないほど、渡辺省亭の筆使いを感じられる花鳥画となっていました。迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)の室内はほぼ撮影禁止なので、写真は撮れませんでしたが、公式サイトで紹介されていますので、今回の展覧会の原画を比較してみてください。

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渡辺省亭展を監修された古田亮先生の解説も聞けるそうです!滅多にないチャンスです!

令和3年4月9日(金)、4月16日(金)及び4月22日(木):東京藝術大学大学美術館准教授 古田 亮 令和3年4月20日(火)及び5月11日(火):東京藝術大学大学美術館教授 黒川 廣子

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▼3年前に訪問した際は、夏のライトアップ中で、幻想的な迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)を鑑賞することができました。

本当に美しかったので、ぜひ足を運んでみてください。

ドガの目の前でささっと描いた作品も!

左:《鳥図(枝にとまる鳥)》(1878)(アメリカのクラーク美術館所蔵)は、省亭が1878年のパリ万博での評判を受けて、パリに派遣されていた時、美術商の林忠正に伴われ、コレクターで批評家のフィリップ・ビュルティ邸で披露した作品で、印象派エドガー・ドガの目の前で描いた作品だそうです(図録、解説参照)。この写真では小さくて見えませんが、「為ドガース君 省亭席画」と書かれており、まさしく、ドガの目の前で省亭が描いた作品なのです。即興で描いても、目の前で、鳥が不安定な細い枝に止まって揺れているように見えるなんて、驚きました。

中央の作品は《蓮に鼠図》、右側は《柳に雀図》で、ともにイギリスのマルコムフェアリー所蔵の作品です。どちらも、ネズミやスズメのような小さい生き物のかわいらしい仕草が生き生きと描かれています。額が少し変わっていて、籐で編んだような、アジアンな額になっていて、作品と合っているような気がしました。

「床の間の芸術」として鑑賞できる展示会場は「密回避」にも!

渡辺省亭の作品は「床の間の芸術」と称されることが多く、展覧会場で見るような大きな作品ではなく、当時のコレクターなどが自宅の「床の間」で楽しむ作品が多かったようです。

そこで、この展覧会では、床の間で鑑賞している気分を味わえるよう、特別な展示光景となっていて、掛け軸が「密」になっていないので、安心して鑑賞できます。

浮世絵や掛け軸などは、鑑賞者がついつい近づいてしまうので、密になりがちだと思い、コロナ禍では、実はできる限り避けていましたが、こちらの会場はそんな不安もなくなるような広さ、作品間のソーシャルディスタンシングでした。

ポスターやフライヤーになっている《牡丹に蝶の図》もこちらで鑑賞できます。両側も覆われているので、まさにプライベートな空間で鑑賞しているような気分になれました。

見事や白と桃色の牡丹のやわらかい花弁の質感まで伝わってくるような作品で、自宅でゆっくり座って鑑賞できたら(狭い我が家にはそんな空間はありませんが)、と想像すると、ニヤニヤしてしまいそうです。アゲハがいつ飛び立ってしまうのか、なんだか心配にもなる作品でした。

▼『省亭花鳥画譜』(1890-1891年)は、大倉書店より出版された多色摺木版画譜で、自筆の原画と並んで展示されています。

版画とは思えないほど、省亭の筆致や彩色を再現していて、私のような素人ではほとんど区別がつきません。

最初に触れましたが、オランダのアムステルダム国立美術館も所蔵するほど、芸術作品として価値の高いものであることも納得できます。

オランダ人は貿易が得意なだけあって、損する買い物はしないので(笑)、大量の省亭作品を所蔵している先見の明、審美眼には脱帽です。

▼「会場芸術」と揶揄された川端龍子とは対照的な「床の間の芸術」。個性際立つふたりの画家ですが、鑑賞者が見やすいような作品を描いてくださった点は共通ですね。

[blogcard url="https://mooi-desu.com/entry/ryushi-kinenkan-2021-02"]

鳥類学者・高橋博士のコラムを読んでから向かうと、省亭の描く鳥の緻密さと間違い(?)まで見つけられるかも。

加島美術さんのギャラリートークセッションでは、泉屋博古館分館館長・野地 耕一郎分館長、アートテラー・とに~さん、鳥博士・高橋 雅雄先生のトークだったのですが、

渡辺省亭の描く鳥について、高橋先生も感心される場面が多かったのですが、「これは市場などで手にいれた死体を見て描いたのでしょうね。」などの鳥類学者らしい知見や、オシドリの夫婦の掛け軸については、「これはオス同士ですね。」とバッサリ切り、それに瞬発入れずに野地分館長が「え!!これ、おっさんずラブなの!?」と仰っていたのが今でも忘れられません。

渡辺省亭も天国で聞いていたら、びっくりされていたでしょうね。

そんな高橋先生のバッサリが人気だったのか、現在も加島美術さんのサイトで、省亭の描く鳥について、楽しくも、時に辛口なコラムを連載中です。

[blogcard url="https://www.kashima-arts.co.jp/column/"]

伝説のギャラリートークセッションの動画はこちら。

[blogcard url="https://www.facebook.com/watanabeseitei/videos/1961333070626092"]

加島美術さんでも渡辺省亭が!今年は省亭イヤーになりそうです。

加島美術さんでは、今春も渡辺省亭はもちろん、柴田是真、河鍋暁斎という、ファン必須の企画を開催してくださいます。

上野と京橋は銀座線で一本なので、はしごできますね!

「省亭・是真・暁斎展~パリ・フィラデルフィア万博、海を越えた日本美術~」

日時: 2021年4月24日(土)~5月5日(水・祝)

10:00~18:00 ※会期中無休

[blogcard url="https://www.kashima-arts.co.jp/exhibitions/seitei_kyosai_zeshin/"]

冒頭に触れた2018年の加島美術さんの企画「SETEIリターンズー渡辺省亭展」のサイトはこちら。

ギャラリートークセッションも動画としてアーカイブされてますので、ぜひ!

[blogcard url="https://www.kashima-arts.co.jp/exhibitions/watanabe_seitei02/"]

現在は修復している泉屋博古館分館・野地分館長、「文化財よ、永遠に」でもBL話してたんだった。

[blogcard url="https://mooi-desu.com/entry/2009-09-23-225253"]

小学館から渡辺省亭画集も発売。今年はやっぱり省亭イヤー!

詳細は小学館ホームページへ

国内だけでなく、海外の所蔵品も掲載してくださっているそうで、全国の省亭ファンにはたまりませんね。

小学館さんの画集はちょっと素人には価格も大変なので、展覧会でも販売されている図録もおすすめです。

小学館さんらしく、鑑賞者が気軽に学習できるよう、コラムを設けてくださっていたり、絵に集中できるよう、写真部分には文字を少なめにしてくださっています。

グッズもたくさん。百花繚乱です。

トートバッグもとてもかわいかったので、次回の来館時には購入したいと考え中。

コロナ禍で会えない方に贈るのにもぴったりな一筆箋やフクリアァイルなども豊富です。