新橋駅と地下で直結している、パナソニック汐留ミュージアムで開催の「子どものための建築と空間」展のプレス内覧会に参加してきました。
太田勉館長さんより、開会の挨拶が。
「大人として子どもたちにどのような環境を用意するのか、考えてほしい」
参加前、ホームページを拝見していたとはいえ、「子どものための」というフレーズに、子どもも対象の展覧会なのかな、とも思いましたが、むしろ、子どものために、大人ができることを考える展覧会でした。
まず、ギャラリートーク。
パナソニック汐留ミュージアム学芸員の大村理恵子さんと青森県立美術館の学芸主幹の板倉容子さんのクロストーク。
両美術館の巡回展覧会とはいえ、今回の展覧会のために作品調査、研究から共同で始められたそう。
お二人で第1章から第5章プラスαの展示について、順を追って説明してくださいました。
第1章 子どもの場の夜明け 明治時代
こちらのコーナーでは、擬洋風建築の旧開智小学校の模型が見どころ。
明治時代の図面は和紙に墨で描かれていて、貴重な資料だそうです。ぜひ実物を確認していただきたい(写真だとよくわからないのです)。
続いて、明治時代の学校では体育教育が盛んになり、鉄アレイも。浮世絵にも光景が描かれてて、モダンな感じがしました。
一方で、私の友人たちも取り入れてるモンテッソーリ教育 の遊具もあり、当時から子どもたちの教育には熱心だったことが伺われました。
第2章 子どもの場の夜明け 明治時代
大正時代のコーナーでは、池袋にある自由学園明日館食堂が取り上げられていました。青森県立美術館の板倉さん、思わず、「青森出身の羽仁吉一夫妻の創立です」と(この展覧会で展示されてる建築物や展示品、青森とのつながり、結構、多いんです。)。自由学園といえば、アメリカの巨匠フランク・ロイド・ライトと遠藤新の設計で有名ですが、遠藤新設計の椅子がとても素敵で、大人用があったら、欲しいと思ってしまいました。
また、資生堂で扱っていたという、子ども服もとてもかわいい!
インターミッション 戦争前夜に咲いた花
こちらのコーナーでは、1930年代のモダンデザインの学校や戦争の影響を感じる付録の展示がされてました。あまり暗くなりすぎることを配慮して、このコーナーは通路のようにしてくださってますが、「子どものためにできること」を考えう上で必見です。
モダンデザインの代表として、慶應義塾幼稚舎(1937年・谷口吉郎)が紹介されてます。
また、少年倶楽部には、付録とは思えない戦艦大和の模型がついていたようです。びっくり!
第3章 新しい時代の到来、子どもたちの夢の世界を築く 1950-1970
この時代の学校建築では、建築家・吉武泰水さんが活躍されたそうです。
代表作のひとつ、八雲小学校分校(目黒区立宮前小学校)が紹介されていました。残念ながら現存してないそうです。
また、あの丹下健三さんが設計された幼稚園も紹介されていて、驚きました。見てみたい。
また、このコーナーでは、絵本も。
「スーホの白い馬」の原画も。
また、土門拳が撮影した子どもたちの写真も元気いっぱいで印象的です。
第4章 おしゃべり、いたずら、探検ー多様化と個性化の時代 1971-1985
やっと私の子ども時代まで戻ってきました。この章のタイトル通り、個性を大事にされたいた時代だったと感じます。
「プライパーク」という単語は、ギャラリートークで耳にするまで知りませんでしたが、「あれもこれもそうだったんだ」と、当時の子ども(自分たちですが)は、大事にされていたんだな、と感じる空間が多かったです。
このコーナーでは、青い日記帳のTakさんが、熱い記事を書かれていたモエレ沼公園が!この記事や「カフェのある美術館ー感動の余韻を味わう」にも登場していたので、今回、写真や図面を見て、おお!となりました。早く実際に行ってみたいです(冬は無理)。
ima.goo.ne.jp
彫刻家イサム・ノグチの遺作の初公開資料「モエレ沼公園」の図面をお見逃しなく!
第5章 今、そしてこれからの子どもたちへ 1987-
現在、未来につながるこのコーナーでは、生活の場としての学校(トイレや手洗いの設計までデザイン)が紹介されてます。
代表としては、サレジオ学園、そして、震災後に設立された東松島市立宮の森小学校。
また、いわゆるバリバリを投げて、作品に参加していく「ペタボー」というインスタレーションも。会期終了時には、どんな形になってるのだろう?
宇野所長さんが開会のときに宣伝されてた東大レゴ部のレゴブロック(旧開智小学校)は地下一階、地下二階にあるので、そちらもお見逃しなく!
所感:
この展覧会を通じて感じたのは、明治時代、いえ、少なくとも寺子屋のあった江戸時代からも、「大人は子どもの教育を熱心に考えてきた」ということでしょうか。
最近、教育改革で、昔の教育が全否定されている記事も見かけますが、「大人が子どもにできること」を考え続けてきた精神と工夫された建築は、現在、未来の子どもたちに注ぎ続けていいのではないかな、と感じました。
開館期間:2019年1月12日(土)~3月24日(日)
- 開館時間:午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
- 休館日:水曜日
- 入館料一般:800円、65歳以上:700円、大学生:600円、中・高校生:400円 小学生以下無料
- 障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。