アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

同じコレクションを何度も見ることについて(個人の感想)

私が最初に美術館の年間パスを購入したのは、アムステルダムに住んでいた時のこと。今から10年近くも前。

面接旅行でオランダに行くことになり、ガイドブックを読んでいると、「美術館を巡るなら3館廻れば元が取れる年間パスがお得!」と書いてあったのである。

面接で採用になろうが不採用になろうが、面接旅行中に3館(アムステルダム国立美術館、マウリッツハウス、ゴッホ美術館)は確実に巡るし、と思い、購入。当時は日本円で4700円程度だったと記憶している。

 

みなさん驚愕すると思うが、この年間パス、私立美術館を除く、オランダ王国内の全ての美術館で使用できるのです!すごい!すごい!

Museumkaart(ミュージアムカールト)

と呼ばれるこの美術館年間パス、年々値上げをしていても、たったの64.90ユーロ(8072円、2019年2月9日現在)で、国内400以上の美術館、入り放題!

 

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これがMuseumkaartという魔法のカード!

オランダを旅行する美術館好きは、絶対、絶対、購入しないといけないパスです。

 

そんな驚愕の年間パスでデビューしたので、さぞや美術館三昧だったでしょう、と思われそうですが、当時は、しがないポスドクの身(毎年契約の博士研究員)。トイレの少ないオランダでは、ゴッホ美術館のきれいなトイレが貴重だったので、ゴッホを見ずにトイレだけ借りるなんて狼藉をはたらいてました。今思うと、本当になんてバカ!と言いたい。

 

たまに、土日も実験がなく、少し元気なときに、当時は工事中でとても狭く、あのレンブラント「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」も今よりもびっくりするほど間近で見られたアムステルダム国立美術館ゴッホ美術館レンブラントハウス、一時間ちょっとの街デン・ハーグにあるマウリッツ美術館などに行く程度でした。

その後、家庭の事情で帰国が決まり、知人などの訪問もあり、美術館に行く機会が増えました。

その時、気づいたんです。

「絵が近くなってる」と。

心の距離が近くなってきて、「こんにちは、元気?」と話しかけてる感じ。

ゴッホに至っては、研究で悩んでいたこともあり、アーモンドの枝が一輪生けられてる絵の前で涙ぐむことも。

 

何度も何度も同じコレクションを見ると、同じ絵や彫刻なのに、その時の季節、天気(オランダはほとんどの日が曇りか雨か雪)、自分の感情で全く違うものに見えたり、何度も何度も見てると、美術館なのに、一人で異国にいる私には、「親戚の家」ぽくなっている、ということに気づいたのです。

 

当時、研究者としても追い詰められていたので、この感情が正しいのかどうかわかりませんが、同じものを繰り返し見ることの不思議さや楽しさを学ばせてもらったのは、日曜日は店が休日で他にやることもなく、頭痛が続くほど陰気な天気の続く、オランダだったのです。

 

天気が良くないので、光溢れる絵に憧れる、または、それを見て、春の訪れを想う。

風の強い日にルイスダールの絵を見て、「こんな日に自転車に乗りたくない」と思ったり。

 

長くなりましたが、この年間パスデビューが、帰国後のブリヂストン美術館(現在、休館中)の年間パスや、今年デビューした三菱一号館美術館のMSS-miniという年間パスにつながってます。

現在開催中のフィリップス・コレクション展(~2019年2月11日まで)には8度ほど足を運び、仕事がうまくいかなかったブロガー内覧会(2018年11月1日)と、直近で訪問させていただいた、結構、調子の良くなった2月では、気になる絵が全く違いました。

最後には、フィリップスさん推しのブラックや、最初は苦手だったココシュカもも気になるように。

 

他の美術ブロガーさんが同じ展覧会、または常設展に何度も足が運ぶ理由がわかり、危険なエリアに入ってしまった、とも感じましたが、しばらくは危険地帯を楽しみたいと思います。