アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

映画 雪子さんの足音 (原作:木村紅美)を見て

映画「雪子さんの足音」を鑑賞したきっかけ

▼映画の題名が手書き風なのも、雪子さんと薫が手紙でやりとりする重要なシーンを彷彿させる。

f:id:Berlaarstraat0707:20190627221935j:plain

以前、東京都小金井市に住んで仕事をしていたことがある。当時は、海外から戻り、一流企業に入社したものの数年で退職し、途方に暮れて、やっと入社した中小企業で、人の温かさを感じていた頃だった。

化学系の企業では珍しく、たまたま同僚に、本業は芸術家の方がいらっしゃり、ご自宅の映画館鑑賞会に呼んでくださった。その鑑賞会の参加者のおひとりが原作者の木村紅美さんだった。とても知的な美女、しかも小説家と伺っていたのでで、話が合うかなあ、と心配していたのも杞憂に終わった。木村さんは気さくに話してくださり、映画にも詳しく、私がまだ観たことがない映画も、楽しそうに話してくださり、同い年ということもあり、勝手に親近感を持つように。でも、木村さんの小説を拝読するようになり、全然違う世界を創り出してる方だと驚いた。小説の舞台は小金井や木村さん画学生時代を過ごした仙台含む東北が多いのだけど、出てくる人物が、出会ったことがないのに、本当にこの付近に存在しているかも、と思うほど、うまく書けないけど、描写が現実的だった。

 

 ▼『夢を泳ぐ少年』では、小金井市が舞台に。現実では起こらないことなのに、土地の描写も綿密なせいか、小金井の公園に河童のような少年がいるような気がしてしまった。

すばる 2017年 03 月号 [雑誌]

すばる 2017年 03 月号 [雑誌]

 

▼先生はどんなひとだったんだろう

まっぷたつの先生

まっぷたつの先生

 

『雪子さんの足音』が出版されたのは小金井市を離れてからだが、現実に潜む孤独からくる逸脱した行動の怖さと、美味しそうなご飯の描写の対比がすごく、読了後は放心してしまった。

特に、同性だからか、主人公の薫よりも雪子さんや小野田さんの淋しさが心に残った。

 ▼装丁も素敵な『雪子さんの足音』

AmazonではKindle版も販売されてます。

雪子さんの足音

雪子さんの足音

 

 

原作を裏切らない出演者のすごさ

原作があまりに良かったので、映像化したものを観るのに躊躇してしまい、そのうちに仕事関係の問題もあり、映画館に足を運ぶまでに時間がかかってしまった。

横浜の黄金町にあるジャックアンドベティーで鑑賞した。

▼ジャックアンドベティーでは、6/28(金)10時45分開始が最終上映です!

www.jackandbetty.net

f:id:Berlaarstraat0707:20190627222059j:plain

まず、主演の吉行和子さんが雪子さんを演じている。小説を読んでいる時は、学生時代の最初の大家さんを思い描いてしまっていたので、少しきれいなおばあちゃんを想像していた。

しかし、映画の始まりは、雪子さんがベッドで眠っている様子から始まるのだが、寝姿まで美しい。白髪も、今でいう、グレイヘアーのおしゃれなおばあちゃま。いえ、おばあちゃまというのは不釣り合いなほど、血色の良い肌、美しい横顔。

原作でイメージしていた雪子さんはもう少しおばあさんだったけど、映画を観た後には、雪子さん=吉行和子さんになっていた。

薫を演じられた寛一郎さんの吸い込まれるような目の演技(佐藤浩市さんの息子さん)には、目を見張った。三国連太郎さんから続く、役者DNAを感じた。

また、小野田さん役の菜葉菜さん。原作でイメージした小野田さんより遥かに綺麗な方で、映画公式サイトで拝見したときは「美人すぎる〜」と思ってました。原作では小野田さんが、こちらまで胸が苦しくなるほど辛い存在でしたが、菜葉菜さん演じる小野田さんも自己肯定感が低く、怖いほど、他人に尽くしてしまうような寂しさを感じる人物でした。原作では、最後はどうなったのだろうと気になったまま終わってしまったのですが、映画では小野田さんの最後も描かれてます。

原作では人物描写はもちろんだが、食事の光景が、小説全体に流れる不穏な空気を払うかのように、ほのぼのとしていて、美味しそうなものばかりが並んでいた。木村さんもお料理が上手だったので、ここまで温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たく描写できるのだと思う。しかも、美味しそうに。

また原作を読みたいな、と思う、映像化に成功した稀有な映画だと思いました。

6/28(金)からは西日本で上映です!

yukikosan-movie.com

 

上映予定は下記より 

yukikosan-movie.com

 

 ▼小金井市は東京とは思えないほど、緑が多く、地元野菜が無人販売所で売られてるような、中央線のオアシスのひとつ。最近、観光まちおこし協会がSNSを利用して、小金井の景色や職人さんを紹介してます。

地図と写真で読み解く昭和の小金井

地図と写真で読み解く昭和の小金井