アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

【渋谷・恵比寿】山種美術館 日本画アワード2019【 2019年8月10日(土)~23日(金)】

山種美術館で開催中の「日本画アワード2019」に行ってきました。

今まで存在は知っていたものの、行ったことがなかったのですが、チケットをもらい、きっかけを得ることができました。

 

展覧会情報とアクセス

会期:2019年8月10日(土)~8月23日(金)

開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)

入館料:一般700円、大高生500円、中学生以下無料(普段の展覧会より安い!)

www.yamatane-museum.jp

 

山種美術館は駅から離れてるので、夏はちょっと行きづらいのですが、今回は渋谷からバスで向かいました。渋谷からのバスは学バスなので、普通の乗車料金よりもお得です。

www.yamatane-museum.jp

 

現役の作家さんのトークイベントが!

何も考えずに、キャリアコンサルタントの講義のない日曜日に来館したのですが、ちょうど、「受賞・入賞画家によるアーティスト・トーク」の日でした!

今回は、

杉山愉岳さん《遙か》、永岡 郁美さん《青想夜夢 》、田住 真之介さん《豹と木》、宮腰 有希乃さん《光の街の小さなブルームーン》、平野 知加子さん《Dark Forest》がそれぞれ、ご自分の作品の前で10分間ほど、作品について語ってくださり、なんと質問まで受け付けてくださいました!

 

トップバッターは、杉山愉岳さんの《遙か》。

最初から、話の上手な方だなあと思いましたが、中学、高校で教えられてるそうで、納得!

「今朝もちぎれ雲を楽しみながら、ここにやってきました」と、最初から掴みはOKって感じです。

最近、都会から鎌倉に引っ越されたようで、地元の方とも交流されてるご様子。

「今の立ち位置を考える時」というフレーズが複数あったので、しっかりした様子の杉山さんも色々悩まれた時期があったようでした。そんな時に、中学、高校の生徒たちに絵の具をかぶっていいから、と、床に置いた紙に絵を描かせたところ、インスピレーションをもらったそうです。日本画家になられたきっかけは、高校生の時、竹内栖鳳長谷川等伯の絵を見た時に打たれたような感動を得たからだそうです。それで日本画家になることを決意され、日本画家になられてるの、すごすぎます。

今回の作品は実際に見た空ではないそうです。そういえば、雲の中にうっすら、線や点が描かれてました。それも作為的ではなく、無作為にその時の手に任せて描かせたそうです。

 

 ▼竹内栖鳳というと、このにゃんこ。本物の毛みたいでびっくりしました。実家で猫を飼ってる今は、まさにこの動作を見ています。

 

▼10歳頃に「日本国宝展」で、長谷川等伯《松林図屏風》(東京国立博物館)を見て、本当に揺れてるみたいでびっくりしたのを思い出します。

もっと知りたい長谷川等伯―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
 

 

 

2番目は永岡 郁美さんの《青想夜夢 》。

作品名は、目が覚めている昼に思ったことを、夜に寝て夢見ることを表すという四字熟語「昼想夜夢(ちゅうそうやむ)」をもじって、《青想夜夢》にされたそうです。

青とも緑とも言えない色のシダ植物の中に、輪郭のぼやかされた黒豹がいて、黒豹なのに鋭さはなく、穏やかな印象を受けました。

この独特の青色、実は日曜美術館で、山種美術館速水御舟の「群青」を再現した際に、再現された方が永岡さんなんですって!!すごい繋がりですね!

この黒豹は浜松の動物園の黒豹だそうで、繁殖に成功していて、一番近くで見られるのが浜松の動物園なんですって。そこまで調べて行くのか〜と感心してしまいました。しかも、寒い中、毛布をかぶって、描いたそう。下絵も展示されていますが、下絵ではしっかりと筋肉隆々の黒豹が描かれてました!作品とは全然違うので、その工程も気になりました。

 

▼残念ながら、その時の番組は見つかりませんでしたが、2016年11月のブログに速水御舟と原三渓の関係が紹介されてました。

www.nhk.or.jp

永岡さんは、普段から動物の絵を描かれることが多いそうですが、黒豹を選ばれた理由を伺ったところ、「山口華楊さんの黒豹がかっこよくて!」と、それまでおっとりした様子の永岡さんが高揚された表情で答えてくださいました。

杉山さんもそうでしたが、日本画家の方も、ご自分が大好きな画家のことを語るときは、素人の私たちが好きな画家や絵の話をするときと同じくらい、興奮モードになって、親近感が湧きます(絵を描けない私からすると、日本画を描くのって一番遠い感じがするので)。

 

 たぶん、ホテルオークラで開催された、動物画の展覧会に出ていた黒豹ではないかと。。。たしかにかっこよかったので、覚えてる(作者は忘れてましたけど)。

第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展|みどころ|ホテルオークラ東京

 

▼永岡郁美さんの公式ホームページ。動物の絵がたくさん♪

私、以前にも永岡さんの作品を拝見したことがあったことに気づきました。。。

nagaokaikumi.com

 

続いて、田住 真之介さん《豹と木》。

偶然にもこちらも黒豹です。サイン会でお話を伺った際、「黒豹が続いて、話しにくいかなと思ったのですが、周りの方には、むしろ良いのでは、と言われたそうです。永岡さんの黒豹とは全く別の黒豹ですしね。田住さんの黒豹は筋肉がついてるのに、ふわっとした感じで、優しそうな表情です。猫を飼ってるそうで、京都の動物園に行った際も、自宅の猫を思い出して、選んだようです。

黒豹と木以外には何も描かず、背景はそのまま。潔い作品です。今回の展覧会で、日本画らしいと感じた、数少ない作品かも。

 

4人目の宮腰 有希乃さん《光の街の小さなブルームーン》は、とっても緊張して、原稿を読んでらして、こちらも、「急がなくていいよ。ゆっくりでいいよ〜。」と声をかけたくなるようなお嬢さんでした(途中でお母さんだと判明)。聴衆側は中高年ばかりだったので、みんな親のような気持ちで応援していた様子でした(汗)。

宮腰さんは10年間もスランプがあったそうで、そのスランプから救ってくださったのがお子さんの存在だそうです。育児をしている間に子供の視点になれたそう。「子供が新しい世界に連れて行ってくれた。」と嬉しそうでした。

作品は可愛い女の子が描かれてるのですが、頭には、浮世絵をイメージした緻密に描かれた鯉、下には目が漆で盛り上がらせてるような亀(目は伊藤若冲の作品にヒントを得たそうです)。モロッコのランプに、湯気を出してコーヒーカップから溢れてるコーヒー、、、。今まで見た日本画とは全く異なるファンタジーのような世界。

この作品のタイトルに「ブルームーン」が入ってるのは、”Once in Blue moon"

(馬鹿げた、滅多にない)という、英語のフレーズから得たそうで、実は小さな青い月が描かれてます。

ぜひ、探してみてください。

 

最後は、平野 知加子さん《Dark Forest》

平野さんはナレーターかと思うほど、聴きやすい話し方でした。びっくり!

作品は不思議な世界で、目隠しをした女性の周りに様々なものが。。。。

テーマは二極性、対極性だそうで、世の中の現象には表と裏がある、表裏一体。コインを使って、表から裏を見せてくださった際に、「私たちは裏を見せた際に、その裏が表となり、裏を見ることはできなくなるのです。」と解説してくださいました。

目隠しされた女性に対し、闇夜でも見えるフクロウを描くことで、女性は実は見えていることを暗示したり、3つの目も闇夜でも見えてることを表してるそう。ランプも心の目を表してるそうです。

口を開けてる顔と目を閉じてる顔。両者は、平野さんの表現する阿吽像だそうです(なるほど!)。カエルは潜在意識を表してるそうで、平野さんの作品には、地の底に蠢いているものとしての爬虫類が描かれることが多いそうです。

深い作品なので、じっくりとご覧になっていただきたいです。

いろんなものが描かれてるのにごちゃごちゃしていないのが不思議でした。

 

イベント後、図録にサインをいただいたのですが、皆さん達筆(縦書きなのに!)で、さすが日本画家!と感心した素人なのでした。

作家さんにサインをいただくと、本当に感動しますね。同じ時代にすごいひとたちがいるんだ〜、応援しよう!って。

撮影可能な作品もあります

撮影可能な作品もあるので、ぜひスマホ持参で。
安原成美《雨後のほほ》(女性かなぁと思い込んでいたところ、図録のお写真を見たら男性でした!)。この作品については、圧倒的でした。写真では全く表現できない、配色の美しさ、構図、そして、雨のあとの空気感を表現とのことですが、本当にその空気まで伝わってきそうな作品でした。

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酒井抱一池大雅の作品も展示されている!

第二会場には、酒井抱一《秋草鶉図【重要文化財】》や池大雅《指頭山水図》、椿 椿山《久能山真景図 【重要文化財】》も展示されています。

 ▼琳派の中で、安心感を感じるのが酒井抱一だったりする。元気ないときは、酒井抱一くらいの感じが良い(大胆な方の琳派は弱ってるときは辛い)。

酒井抱一と江戸琳派の全貌

酒井抱一と江戸琳派の全貌

 

 

 

同時代の日本画家の作品が一同に見られるチャンス!

応募時に45歳未満という規定があるので、若い日本画家の作品ばかりです。

これからもずっと新作を見られるということ!

自分が生きてる間、常に新作を見られる作家を探せるチャンスなんて、とっても嬉しくなりませんか?

会期は8月23日(金)まで、と短いのですが、個性豊かな作品ばかりなので、ぜひ足を運んでいただきたいです。

 

 ▼なぜか私はあまりご縁がなくて、毎回見逃す速水御舟展。