アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

【六本木一丁目駅】泉屋博古館分館 住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」

六本木一丁目駅から徒歩3分ほどの泉屋博古館分館(せんおくはっこかん ぶんかん)のブロガー内覧会に参加してきました。

*写真は特別に許可を得て撮影させていただきました。

会期:2019年9月10日(火)~10月27日(日)
前期:9月10日(火)~9月29日(日)、後期:10月1日(火)~10月27日(日)

開館時間:10:00~17:00(入館は16時30分まで)
※10月11日(金)のみ10:00~18:00(入館は17時30まで)

休館日:月曜日(9月16日・23日、10月14日は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火連休が多いので、火曜日が休館のこともあります。要注意!

入館料:一般600円(480)、高大生400円(320)、中学生以下無料
※リピート割:会期中2回目観覧時に1回目来館の半券持参で1名1回限り
半額料金!!(一般300円、大高生200円。他の割引との併用不可)

▼ロビーコンサートやシンポジウムなど、楽しいイベントがたくさんあるので、ホームページより詳細をご確認ください。

www.sen-oku.or.jp

全国4会場で同時期開催

全てポスターのフォントなども違うのが興味深いです。

泉屋博古館(京都・鹿ヶ谷)

2019年9月6日(金)~10月14日(月・祝)

東京国立博物館(東京・上野)

2019年10月1日(金)~12月1日(日)

九州国立博物館(福岡・太宰府)

2019年9月10日(火)~11月4日(月・振休)

 

「最新の科学」というフレーズに魅枯れて応募しました

泉屋博古館分館さんのサイトに、「最新の科学」というフレーズを見つけ、元・研究者ということもあり、興味津々で応募したところ、無事に参加できました。

 東京の泉屋博古館分館では、伝統の技術と最新の科学によって近年修理された国宝や重文を含む絵画や工芸品約50点を展示し(途中展示替あり)、美を守る文化財修復の最前線を紹介します。修理によって新たに分かった創作技法や蘇った文化財の素顔に出会える絶好の機会となるはずです。

絵画の修復は数百年に一度

前半の解説は、京都の泉屋博古館学芸員さんでいらっしゃる竹嶋康平さんが行ってくださいました。

絵画の修復は基本、数百年に一度で、短いスパンでも100年に一度、とのことで、驚きました。

日本は高温多湿な上、絵画の描かれてる素材は、絹や和紙など、しかも絵の具は

膠水で定着させたものばかりなので、傷み、経年劣化が早いため、現在に伝わってる作品を後世に伝えるのは容易ではないそうです。

また、以前の修理の状態が正確に把握できることが大切だそうで、次の修理をされる「装潢手」(そうこうしゅ)に、正確に情報を伝えるのが義務だそうです。

 

*今回初耳だった「装潢手」(そうこうしゅ」、早速、検索したところ、社団法人を発見しました。専門用語なので、正確性が重要と考え、社団法人のサイトをそのまま引用させていただきます。

国宝修理装潢師連盟は、国宝・重要文化財を中心とした文化財(美術工芸品)の保存修理を専門的に行っている修理技術者集団です。主に日本・アジア地域で製作された「絵画」「書跡・典籍」「古文書」「歴史資料」などを修理対象としております。

www.kokuhoshuri.or.jp

この装潢手さんたちは、作品の持ち主、指定文化財文化庁などの担当とも相談して慎重に、表具の布の色なども決めていくそうです。

現在、装潢手を手掛けてる会社は少ないそうで、修理を見れば、わかるひとは、「あ、この装潢手は、○○だね。」なんて、わかるそうですが、ほとんどのひとはわからないそうです。

普段、美術館や博物館に行けば見られてる状況は、実はとても恵まれているんですね。

ブロガー内覧会でも写真撮影禁止の大切な信仰の対象となる作品群! 

竹嶋さんに解説していただいた会場は、仏画が多く、信者の皆さんにとっては大切なものなので、今回はブロガー内覧会でも撮影禁止でした。でも、一層、ありがたみが増した気がします。

今回の展覧会には、 日光山輪王寺の作品《軍荼利明王(金剛童子)像》《不動明王像》《大威徳明王像》の3点が展示されているのですが、この日光山輪王寺は、関東では珍しい門跡寺院だそうです。門跡寺院とは、皇族の方がお寺のトップになってるお寺のことで、日光山輪王寺後水尾天皇が門跡だったそうです(仁和寺のイベントに参加した際に、門跡寺院について教えていただいてよかった!)。

mooi-desu.com

 《不動明王》は、9代目の門跡の時に修理したことが記録されてるそうで、寛政の改革頃(18世紀末)に修理されているので、今回は 約200年目で、竹嶋さんは嬉しそうに「 良いタイミングだったんですね!」とおっしゃってましたが、私には時間のスケールが大きすぎて、「そ、そうなのか。。。」と頷くことしかできませんでした。いつか、「良いタイミングで修理したねえ。」とか言ってみたいものです。

続いて、《弘法大師捨身図》。こちらは鎌倉時代の作品で、山梨県大聖寺の所蔵だそうです。弘法大師が親交を深めようと崖から飛び降りようとしたところ、その熱意が通じて、助かったという逸話を描いた作品です。掛け軸の作品ですが、掛け軸は巻いて収納するため、ご想像の通り、横折れの跡が残ってしまいます。修理の際は、作品(絹)以外の全ての紙(肌裏紙など)を剥がして解体するそうです。ただ、作品自体は絹でできてるので、伸ばせる(!)そうで、裏の肌裏紙を剥がして伸ばせば回復できたそうです。ただし、1日に20cm四方の裏にある紙を剥がせれば上出来、というくらい、気の遠くなる作業だそうです。

 

▼今回の展覧会とは関係ありませんが、検索したところ、こちらの株式会社岡墨光堂さんのサイトに、掛け軸の構造図が。

www.bokkodo.co.jp

修理に使用する色々な技術と道具 

私が聞き取れた範囲ですが、個人的に面白かったので、備忘録も兼ねて、記載を。

補絹(ほけん)

絹本に描かれている作品に欠損部分が生じた際、他の絹から移植して修復する方法。なんと!同じ編み方の絹をしつらえて、修復。その際、わざと劣化させて同じ時代のものにするそうです(すごい!)

 

糊(のり)

お米でできた糊を使用。古のり(接着が弱い)、新のり(接着が強い)を使い分けながら紙を重ねるそうです。

また、刷毛で糊を打つ風習があるそうなのですが、最新の科学によって、この動作は、儀礼などではなく、糊を分子レベルで接着させていることが判明したそうです。

会場にあるビデオでは、刷毛で叩きつけてる音も聞けるそうなので、注目してみてください。

 

燻蒸(くんじょう)

害虫駆除や防カビ・殺菌の目的で、いぶすこと。その後、いぶしても除けないカビの胞子を筆で払いながら吸引して、カビを除くそうです。地道です。

 

▼ 気になる本を見つけましたが、現在は販売されていない模様。古本屋さんで探してみようかな。だめもとでAmazonKindle化をお願いしてみました。

図解 日本画の伝統と継承―素材・模写・修復

図解 日本画の伝統と継承―素材・模写・修復

 

▼こちらは今回のような修復専門の展覧会でなくても使用できそう。レビューが星5つなので、安心。 

図解 日本画用語事典

図解 日本画用語事典

 

 

仏画関係以外の作品は撮影可能とのことで。作品No.12《草虫図》では、牡丹や蝶々が描かれてます。今回の修復では、儚げなボタンの色の塗られ方が判明したそうです。裏紙を剥がしたところ、絹の部分に、牡丹と蝶々のみ、裏から白の彩色をしていたことがわかったそうです。この技法は、裏彩色と呼ばれるそうです。修復で解体することでわかることもあるんですね!

 

 ▼《草虫図(そうちゅうず)》中国・元時代13世紀 山口・菊屋家住宅保存会所蔵

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作品No.13《立花図》はわかりやすくて、瓶の色が修復前後で全く違います。

▼説明のパネル

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濁った色から透明感が出てきたので、ガラスの花瓶であることがわかりました。

肌裏紙を剥がしたら、真っ黒な肌裏紙だったそうです。でも、これは汚れではなく、江戸時代に暗い肌裏紙が流行したなごりだそうです。表面の絹が欠落しても、目立たないから、という実用的な理由での流行というのが、面白かったです。今回の修理では、明るい肌色紙にしたそうです。ただ、どこまでがオリジナルなのか、また、表具も含めて作品という見方や、持ち主の思いがある場合は、修理の際もあえて同じもの使うようにする、など、様々な配慮が必要だそうです。ただきれいにすればいい、というだけではないのは、とても難しいですね。

え、BL?修復のお話が耳に入らず。。。

ここからみなさんお馴染みの野地耕一郎分館長さんの解説に。

泉屋博古館分館のコレクションの魅力を語られてます。

www.sumitomo.gr.jp

比叡山真景図》池大雅の壮年期の作品だそうです。

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京都の池大雅展にも出展されたこともある作品にも関わらず、40年間くらい行方不明だった作品。最後に所有していた作家・五味康祐さんが急逝され、床の間に掛けられっぱなしだったそうです(えー!)。さらに、雨垂れで汚染されたという、気の毒な作品。よーく見ると、比叡山が噴火してるかのように見える(野地分館長談)くらいのシミは残ってます。解体修理をし、クリーニングを何度も行なったそうです。サクションテーブルという機器に本紙を入れて、気圧で後ろの吸取り紙で汚れを取るという、いかにも面倒そうな作業を何度も繰り返し、

2年かけて修理したそうです。また、ピンセットで折れ癖を修復するため調べたところ、肌裏紙、中裏に折れが多かったそうです。昔の修理では、墨の線で折れに

目印を付けていたそうで、残っている墨を除去されたり、とかなり苦労されたようです。ここまでは修理の大変さに感心しきり、だったのですが、こちらの絵、

池大雅とは、お互いに、絵と詩を物々交換していた文人(聞き取れず)が所有していたものだそうです。「あー、このふたりはボーイズラブですから。当時は普通ですから。」と野地分館長。聞きなれない修復の話に少し緊張していたブロガーたちも笑顔になり、穏やかな雰囲気に。

実は私、野地分館長のトークイベントでは、以前もBL話を聞いたことが。その際は、渡邊省亭が描いたおしどりの絵について、野地分館長が高橋鳥博士に伺ったところ、高橋博士が、「あの、申し上げにくいのですが・・・オス同士ですね。」と答えられたところ、野地分館長が「え!!これ、おっさんずラブなの!?」と嬉しそうに反応されていたのが忘れられません。江戸時代って、そういうお話が多いのでしょうね。

▼ほぼ1年前に開催された、加島美術さんの渡邊省亭に関するトークイベントです。

泉屋博古館分館館長の野地 耕一郎氏がアートテラー・とに~氏と鳥博士・高橋 雅雄氏

www.facebook.com

修理に注目している珍しい展覧会

今回の展覧会「文化財よ、永遠に」は、修理に注目している、珍しい展覧会です。正直、マニアックな用語だらけでした。でも、修復された作品の横のパネルがとても親切で、素人の私でも「へ〜。修理すると、こんなことがわかったり、絵が内側に入ったりして(詳しくは会場で)、面白いなあ。」と、いつの間にか、修復の世界の深さに引き込まれていきました。修復プロセス以外にも、ビデオも流されているのですが、仏画の修理後の公開の際にお客さんが「本当にありがたいことです。」と手を合わせてる様子に感動しました。改めて、仏画は芸術作品だけではなく、信仰の対象であり、今回のような修復で蘇ることで、救われてる方もいらっしゃることもわかりました。

リニューアルした近所の大倉集古館と一緒に巡りましょう!

泉屋博古館分館と、最近、リニューアルオープンした大倉集古館は、目と鼻の先です。「文化財よ、永遠に」に展示されている作品には、大倉博古館所蔵の作品です。ご近所さんでの貸し出し、良いですね。

 

▼左側の光っている高い建物がホテルオークラ別館なので、すぐ目の前に大倉集古館が。ぜひ、一緒に巡ってみてはいかがでしょう。

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mooi-desu.com

あ〜ととらいあんぐるスタンプラリーに注目(2019年10月27日まで)

泉屋博古館分館とコラボすればいいのに、という浅はかな素人の考えなど、とっくに読まれており、大倉集古館、泉屋博古館分館、菊池寛記念 智美術館の3館であ〜ととらいあんぐるスタンプラリーを開催されてます!記念品は先着200名までなので、急ぎましょう〜。

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www.tokyo-np.co.jp

泉屋博古館分館は2020年1月より休館

泉屋博古館分館ですが、2020年1月より休館となるそうです。リニューアルのためだそうなので、ご安心を。

2022年のリニューアルオープンを予定されてるそうですが、詳細は追ってお知らせくださるそうです。