アーモンドの花を探しに

アムステルダムに住んでいたのら博士(理学)のMooiが好きなことやひとりごとを書いてます。2020年4月に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、お役に立ちたいと考え中。

【六本木】「日本美術の裏の裏」展〜日本美術の先達としてのサントリー美術館のリニューアル【予約不要!】

 六本木には、なかなか足が向かないMooiです。

そんな私ですが、サントリー美術館がリニューアルされ、より素晴らしい展示になっているという噂を聞き、雨でしたが、向かってみました。

「リニューアル・オープン記念展II 日本美術の裏の裏」展です。

「リニューアル・オープン記念展II 日本美術の裏の裏」展は予約不要! 

新型コロナウイルスの流行後、展覧会に行く際に気になるのが、事前予約は必要か否か。仕事が早く終わったら向かいたい、という人など、その日の予定次第で展覧会に行けるかどうかわからない人には不便な制度です(感染予防のためなので、仕方ありませんが)。サントリー美術館は今現在までは、予約不要なので、ふらっと寄ることが可能です。

会期:2020年9月30日(水)~11月29日(日)

開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)

※11月2日(月)、22日(日)は20時まで開館

休館日:火曜日

入館料:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下無料

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第1章: 空間をつくる

第1章では、掛け軸や屏風など、空間をつくる作品が展示されています。ポスターになっていた円山応挙の作品が最初の展示作品になっていて、異空間に誘ってくれます。

円山応挙《青楓瀑布図》

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重要文化財 伝 土佐広周《四季花鳥図屏風》の右隻 10月26日まで。

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第2章: 小をめでる

平安時代の作家・清少納言が著した『枕草子』には、「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」という有名な一節があります。つまり、私たち日本人は「小さいものは無条件にカワイイ♡」という感覚を、古くから持ち続けているのです。サントリー美術館のサイトより

小さいのに、実用品並みの緻密な細工が施されている道具の数々には目を見張ります。そして、何より「かわいい!」。拡大鏡があるので、小さい作品の緻密な造りもしっかり見られます!

▼《鈴虫蒔絵銚子》江戸時代と雛道具《牡丹唐草文蒔絵銚子》 

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▼《織部鷺文輪花皿》桃山時代と雛道具《織部写千鳥文四方皿》

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第3章: 心でえがく

へたうまな絵から目が離せない室町時代の絵巻物《かるかや》が全編公開されていて、これは珍しいことだそうです!

▼妻子を捨てて出家した理由が、こんなことでいいのだろうか、と思ってしまった。

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▼寝ている絵が、寝ているように見えない。

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▼息子が出家した父親を探しているうちに、妻は亡くなってしまう(悲)。

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 ヘタウマな絵によって、悲劇度が少し和らいでるような気がしました。

第4章: 景色をさがす 目が疲れない照明!360度鑑賞できるガラスケース!

この展覧会で一番のハイライトは、この章ではないかと思うほど、映り込みのないガラスケースで、360 度、好きな角度から鑑賞できるコーナー。

▼4階から降りて行く際、最初に思い出したのは、「古典x現代2020」の尾形乾山皆川明さんのコーナー。素材は違いますが、陶器の上に丸い装飾、似てませんか?

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▼美しい展示コーナー!!

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野々村仁清《色絵鶴香合》も色々な角度から見られました!かわいい!照明も明るくなったのか、以前よりも色が鮮やかに感じました。

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第5章: 和歌でわかる

▼写真がうまく撮れず恐縮ですが、「和歌でわかる」という、草書体で読みにくい文字の影が「ゴシック体」で読みやすく表示されています!かっこいい!!

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▼仁阿弥道八《色絵桜楓文透鉢》が想像以上に大きくて、想像以上に精緻な絵付けで感動しました。

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重要文化財《佐竹本・三十六歌仙絵 源順》も展示されています。和歌と言ったら、やっぱり三十六歌仙! 

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第6章: 風景にはいる 最後の展示品が粋です!!徒然草仁和寺の法師には案内が必要だったように、私のような初学者には、サントリー美術館さんの案内が必要です〜。

こちらでは絵巻物が中心に展示されていますが、最後の展示品が徒然草になっていて、とても粋だと思いました。この展覧会は、初めて日本美術を鑑賞される方、また、日本美術を避けてきたひと(私もそうでした)にも親しみやすく、わかりやすい解説が多く、感心しました。次回は友人を誘って、訪問したいな、と思うほどです。

仁和寺のサイトより引用。

徒然草第52段

仁和寺(にんなじ)にある法師、年寄るまで、石淸水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩(かち)よりまうでけり。極樂寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。さて、かたへの人にあひて、「年比(としごろ)思ひつること、果たし侍(はべ)りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」と言ひける。

すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり。

 

(口語訳)

仁和寺にいた、ある法師が、年をとるまで石清水八幡宮をお参りしたことがないことを情けなく思い、ある時思い立ち、一人、徒歩でお参りにいった。(山麓の)極楽寺と高良神社をお参りし、(八幡宮へのお参りは)これだけだと思い込み帰路の途についた。

帰った後、傍輩に向って、「ずっと(心に)思っていたこと(八幡宮へのお参り)を果たせた。聞いていた以上に尊さ(八幡大神の御神威)を感じた。ところで、他の参詣者が皆、山へ登っていったが、何か山上にあるのだろうか。行ってみたいとは思ったが、お参りすることが本義であるからと思い、山上までは見に行かなかった。」と言った。

小さなことにも、案内者(指導者)は欲しいものである。

 

▼海北友雪《第五巻 徒然草

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番外編:ソーシャルディスタンシングを促す案内が「ツル太さんの足跡(?)」なのが、かわいい

▼《色絵鶴香合》のツル太さんの足跡かなあ。

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帰りは徒歩3分の喫茶店で自家製ケーキを食べながら、鑑賞を振り返る

六本木には土地勘があまりに無く、帰りには銀座に出てお茶するほどのMooiでしたが、運命の喫茶店に出会うことができました。

こちらの紗絵羅さんは、ケーキセットが1000円未満という、六本木とは思えない価格で、ドリンクと自家製ケーキを味わえます。二度ほど来店させていただきましたが、混雑することもなく、安心して、サントリー美術館さんのフライヤーや作品リストを見ながら、お茶時間を楽しむことができました。

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retty.me

 ▼5月に聞いた「ポストコロナ時代の美術館」に関するラジオについて記載した記事から約5ヶ月。その頃よりは、楽観的というか、美術館に行く際の緊張感は減ったように感じる(マスクに消毒を徹底しつつ)。

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