三菱一号館美術館で開催中の「印象派・光の系譜」展の内覧会に参加してきました。
*写真は許可を得て、特別に撮影しております。
ポスターやフライヤーにある「あなたの知らないモネが来る。」と言うフレーズが頭に残り、「そんなこと言っても、モネといえば睡蓮だから、ポスターになっている睡蓮の作品で、そんなに驚くことはないんじゃないの?」くらいの気持ちで向かってしまいました。
参加して、反省しきり。
モネはもちろんですが、目移りするほど、知らなかったけどすごい画家、知らない作品に出会える展覧会でした。
この展覧会は一度ならず、何度も足を運びたくなる展覧会だと思いますので、お早めに向かわれることをおすすめします。
開幕直後の緊急事態宣言中でも人が多かったと聞いたほどなので、後半はかなり混むのではないかと思います。
上野のゴッホ展とはしごの人も多そう。
展覧会概要
会期:2021年10月15日(金) ~ 2022年1月16日(日)
開館時間:10:00〜18:00(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日*と年末年始の12月31日、2022年1月1日
*但し、10月25日、11月29日、12月27日と1月3日・1月10日は開館 ←普段より空いてると思われる狙い目の日!
主催:三菱一号館美術館、イスラエル博物館(エルサレム)、
産経新聞社
後援:イスラエル大使館
[blogcard url="https://mimt.jp/israel/"]
構成は以下の通り。
I 水の風景と繁栄
II 自然と人のいる風景
III 都市の情景
IV 人物と生物
3つの見どころ
三菱一号館美術館の公式サイトやフライヤーで目にされた方も多いと思いますが、見どころは3つだそうです!
上記画像は公式サイトより拝借
ポイント1のイスラエル博物館。私は初めて知った博物館でした。
ギャラリートークで担当の安井学芸員から伺った話では、1965年に創設された博物館で、小型の大英博物館、メトロポリタン美術館のような博物館だそうです。帰宅してホームページを見たところ、50万点近くの作品を所蔵している、思ったよりも大きな博物館のようです。この巨大なコレクションの中から印象派の名品を日本で公開してくれているのが、今回の展覧会だそうです。個人的には、安井さんのお話で聞いた、イサム・ノグチの庭園も気になりました。なかなか行けない国なので、都内で作品を鑑賞できることに感謝です!
↓イスラエル博物館の公式サイト
[blogcard url="https://www.imj.org.il/en"]
ポイント2の印象派。 同じみの印象派の作品とはいえ、いつもと違う作品、見たことがない作品ばかりでした。知らない作品だらけで、キラキラ度が高くて、日が短くなった今の時期にぴったり。絵画で日光浴!と言う感じで、鑑賞後、外は暗かったのに、なぜか元気が出ました。
ポイント3は、画家のピーク、担当学芸員の安井さん曰く、「当たり年」の作品が多いそうです。
画家の一生にもピークとそうでない時があるのは当たり前ですが、有名な画家だと忘れがちなので、この展覧会を通じて、当たり年を覚えておくと、今後の鑑賞時にも楽しめそうです。
コロー好きにはたまらない。コローだらけで始まる展覧会
コローの描く、穏やかな世界に住んでみたい。研究に疲れている時、よく思ったものです。
6点のコロー作品を充ことができます。川沿いの町と船を描いた作品は2点も。
▼《川沿いの町、ヴィル=ダウレー》1855-1856年
▼《魚を運ぶ釣り人》制作年不詳
水の画家、ドービニーも!
▼《川の風景、バ=ムードン》1859年
▼左《岸辺のボート》制作年不詳、右《潮、海辺の日没》制作年不詳
2点の並ぶ様子が、海辺で遊んだ後、日が暮れかかって帰る、夏休みを思い出す作品でした。
私の好きなシスレー作品が3点もあり、嬉しかったです。今、都内では、アーティゾン美術館、Bunkamura ザ・ミュージアムでも見ることができ、シスレー好きにはありがたい期間になっています!
▼《サン=マメス、ロワン川のはしけ》1884年
▼ウジェーヌ・ブーダン 《港に近づくフリゲート艦 》1894年
この暖炉が作られたのが1894年、三菱一号館ができた年で、偶然にも(?)ブーダン作品と同じ年だそうです。
ゴッホの当たり年1888年の作品2点に注目!
癖がないというか、悩んでいない、能天気な雰囲気というか、楽しそう!
自分で言うのも変ですが、ゴッホを見た回数だけは多いので(オランダにいたし)、ゴッホにもこんなに楽しそう作品があったなんて、全く知りませんでした。広々とした黄金に輝く畑と青い空。
担当学芸員の安井さんによると、ゴッホの当たり年である1888年の作品。ゴーガンが「黄色い家」にやって来る前のわくわくしていた時期だそうです。なんと、描き始めたのが6月であることもわかっていて、この1888年には7点の作品を描いたことがベルナールへの手紙で判明しているそうです(オーディオガイドでは、イスラエル博物館の説に従い、6 点と言ってるそうです)。手紙魔ゴッホ、何でも記録している!!
もともとはエドムンド・ド・ロスチャイルドが所蔵していたもので、この方が国土回復運動の先頭にいたそうで、
この博物館の設立基金に預けて、所蔵となった作品だそうです。この博物館の初期所蔵品は寄贈が多いそうですが、この展開もドラマチックですね。
隣に展示している《麦畑とポピー》は、上野の森美術館で開催されたゴッホ展でも来日していたそう。こちらも元気いっぱいな作品でした。
▼2019-2020年に開催されたゴッホ展
[blogcard url="https://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=913189"]
一方のモネの藁。存在感があまりありませんね。薄味。
夏に外で写真を撮ったら白くなってしまったかのような、薄い色彩と光。麦わらをお嬢さんたちにたとえています。お嬢さんたちが眩しすぎたのかな。三菱一号館の建物ができた年と同じ、というお話も。
▼《ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて》1894年
▼《睡蓮の池》907年
2019年に訪問したジヴェルニーで見た、この光景とそっくり。モネが見ていた光景を自分も見ていたんだ、と感動しました。
次にブレイクするのはこの画家!?レッサー・ユリィ
今回の展覧会で初めてしったレッサー・ユリィ。4点が色々な部屋に展示されていたにも関わらず、どれも印象が残っています。
パレットナイフで撫でて描いて、この黒い縦線で描かれた木々に、独特の雰囲気が出たそうです。
最初の部屋にあったクールベの描く海もパレットナイフで描かれたそうです。
▼レッサー・ユリィ《風景》1900年頃
▼ギュスターヴ・クールベ《海景色 》1869年
雨とユリィの作品。
▼ミュージアムショップのポストカードで初日に売り切れたという《夜のポツダム広場》。緊急事態宣言で、仕事帰りには真っ暗な街並みを歩き慣れたせいか、こういう夜でも人がたくさん歩いていて、ビルから灯りが漏れる光景を待ち望んでいるからかもしれない、と予想(個人の感想です)。
▼《冬のベルリン》 私が12年前にベルリンに行ったのも冬で、雪と雨ばかりで本当に寒かったです。その頃の暗い空、雨なのに、クリスマス前で賑わっていたベルリンの街を思い出しました。
▼《赤い絨毯》
最後の部屋で目を奪われた人が続出なのでは?
前期と後期で、日本国内の睡蓮が入れ替え!
前期は、《睡蓮》 1907年 DIC川村記念美術館所蔵 と、《 睡蓮》 1907年 和泉市久保惣記念美術館所蔵がお目見えしています。同じ年の睡蓮が同じ部屋に展示されてるのも運命的ですね。しかも、日本国内に所蔵されてるなんて。後期はク《睡蓮》 1908年 東京富士美術館所蔵がお目見え。2回は足を運ばないと行けない展覧会ですね。
ゴーガン部屋は良作ばかり!
私はそんなにゴーガンの作品が好きではないのですが、担当学芸員の安井さんが、もし、この中から譲ってもらえるとすれば、となったら欲しいのが、ゴーガン作品(一部屋全部がゴーガンの部屋が)だそうです。モネの研究者である安井さんがゴーガン!と仰るほどの良作ばかりなんですね。ちなみにゴーガンは天才で安定しているので、当たり年がないそうです。ゴーガン、すごい(でも、そんなに好きになれない。)。
▼ウパ ウパ(炎の踊り) 1891年
ルドンの《グラン・ブーケ》も出展中。リーフレットは新版に!
みなさん大好きなグ《グラン・ブーケ》1901年も展示されています。
今回、《グランブーケ》にまつわるリーフレットが加筆されて、新版として販売されてるので、そちらにも注目です!
人物と静物のコーナーはどの作品も穏やか
最後のコーナーは穏やかな気持ちになる作品が多かったです(ユリィの《赤い絨毯》を除いて)。ヴュイヤール作品が多くて、意外でした。
▼エドゥアール・ヴュイヤール 《エセル夫人、ナポリ通り》 制作年不詳、《窓辺の女》
▼エドゥアール・ヴュイヤール《長椅子に座るミシア》 1900年頃
ミュージアムショップも小さな美術館に!
ミュージアムショップでは、SNSでも話題になった、ポストカード全部額装展示、ですね。実際に拝見したら、小さな美術館のような光景になっていました。
▼初日に完売したというレッサー・ユリィ《夜のポツダム広場》
いつもそうなのですが、三菱一号館美術館のTシャツは、私のような中年が着ても大丈夫なような、しっかりしたものが多いです。今回も大丈夫そう!
おなじみのミニキャンバスのコーナーも素敵でした。どれも家に飾りたい〜。
カタログ2,900円も。 私は次回の訪問時に購入予定。
▼イスラエルのコスメブランド「ラリン」のハンドクリームとハンドクリアジェル。なかなか日本では手に入らなさそう。
▼ミュージアムショップの方がおすすめ、とおっしゃっていたジャム。食べた後の瓶を何に使うのか考えるのも楽しそう。
▼あのモネも愛したというサンセールの赤ワインも!
久しぶりのギャラリートークはインカムを付けて。ニューノーマルなトークイベントを感じました。
今回の内覧会では、久しぶりにギャラリートークもあったのですが、参加者は全員インカム着用。
お話してくださった、担当学芸員の安井裕雄さんと青い日記帳主宰のTakさんの間はソーシャルディスタンス。
コロナ前と距離感の違うギャラリートークでしたが、時間を忘れて熱心に説明してくださる安井さんに対し、時間配分を考えて、次の作品に話を振るTakさんの名コンビは健在でした。
お二人とも、ありがとうございました。