アーモンドの花を探しに

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【上野】世界にひとつしかない、螺鈿紫檀五絃琵琶の展示は11月4日(祝)まで!

上野の東京国立博物館で「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」が開催中です。

会期:2019年10月14日(月・祝)~11月24日(日)

開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

(ただし、会期中の金曜・土曜、11月3日(日・祝)、11月4日(月・休)は21:00まで開館)

休館日:月曜日、11月5日(火)(ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・休)は開館)

観覧料金:一般1,700円(1,500円/1,400円)、大学生1,100円(900円/800円)、高校生700円(500円/400円)、中学生以下無料

▼詳細な情報は東京国立博物館のサイトでご確認を。

www.tnm.jp

正倉院とは、1200年前の国宝級の宝物を長年守ってきた建築物で世界遺産

ほとんどの方が歴史の教科書でご覧になっていると思うので、恐縮ですが、少し正倉院について。

正倉院は、聖武天皇光明皇后ゆかりのお品をはじめとする、天平時代(710~794年)を中心にした宝物を所蔵する、奈良県東大寺にある、校倉造(あぜくらづくり)の高床式倉庫です。天平時代から明治時代に入るまで、天平時代の宝物を守り続けてきた、非常に素晴らしい倉庫なのです。明治以降、皇室、宮内庁が率先して守ってきた貴重な宝物であり、今回の御即位の記念に伴い、特別に東京での正倉院宝物展公開となったようです。

 通常は奈良国立博物館で1年に2〜3週間しか公開されない正倉院の宝物が東京で公開!しかも、正倉院宝物と法隆寺献納宝物が同時公開されるのは初めて!!

毎年、奈良国立博物館で2~3週間のみ、開催されている「正倉院展」。

始まりは、宝物を虫から守るための虫干し期間を利用した一般公開だったようです。戦前にも非定期で開催されていたようですが、定着したのは戦後のようです。

東京での開催は、今回は御即位の特別展となりますが、通常は5年に1度ほど、実施されているようです。

個人的には、東京開催はほとんどなかった印象ですが、意外と開催されているのですね。

また、今回の展覧会では、正倉院宝物と、それに並ぶ宝物で有名な法隆寺献納宝物が初めて同時公開される、特別な展覧会となっています。

今回の目玉は、正倉院宝物を代表する、世界にひとつしかない《螺鈿紫檀五絃琵琶》と、8年の歳月をかけた模造品

学生時代、教科書や図録でご覧になられた方も多い、この琵琶が公開されています。

前期終了の11月4日までの公開で、後期は展示されないので、ご注意を!

今回は、1) 実物(No.69)唐時代・8世紀、2)  8年の歳月をかけて現代の職人が手がけた模造品(No.70)、3)明治時代の模造品(No.116)の3点の《螺鈿紫檀五絃琵琶》が展示されています。

 

実物を目の前にした時、自然に涙が溢れてきて、自分でも驚きました。楽器なのに、「あなたが、あの・・・」と心の中で話しかけてしまうほど、生きているかのような佇まいです。最前列での鑑賞は、少しずつ歩いて鑑賞しないといけませんが、何度でも並んで鑑賞させてくださるので、何度でも廻りながら鑑賞しましょう!私は5度ほど廻りました。

 

国家珍宝帳』所載の楽器。主な部分が紫檀というマメ科ツルサイカチ属 の木で作られ、全面に螺鈿や玳瑁(たいまい・ウミガメの一種)の甲羅を用いて、装飾されています。

ラクダに乗った異国風の人物やヤシの木のような南国の植物からササン朝ペルシアからシルクロードを通じて、中国・唐を経由して、日本にやってきたのでしょうか。また、背面には、宝相華という唐草文様の一種が施され、よく見ると、雲や鳥なども細工として、所狭しと飾られています。そして、今回の展示では支えのクッション(?)で見づらくなってますが、底の部分には、朱色やみどりで、草花や鳥などが手描きで描かれてます(伏彩色という技法)。

 

今回は、同室に8年の歳月をかけて、日本を代表する名工たちが作り上げた模造品も展示されています。会場では、こちらの模造品の制作光景のビデオが流れているのですが、本当に驚くほどの職人技、そして貴重な材料を使った贅沢な模造品(個人的には、本物と同じくらいの価値があると思います。特に1000年後の方はそう感じることでしょう。)。

また、上皇后陛下が、皇居内で育てられた純国産種の蚕「小石丸」の糸を弦に使っているそうです。

こちらの貴重な絹糸で絃を作られた橋本英宗さんのtweetを見つけることができました。

芸術品である前に楽器なので、実物と同じ音色が出ないといけないんですね。当たり前のことをすっかり忘れていました。会場は、五絃琵琶の澄んだ音色を聴きながら、《螺鈿紫檀五絃琵琶》2奏を鑑賞でき、とても贅沢な空間となっています。

 また、時事ドットコムニュース2019年07月11日14時35分に、上皇后陛下のお言葉が掲載されてました。

上皇ご夫妻が京都訪問中の3月27日、京都大宮御所で完成品を見学。西川明正倉院事務所長が弦を弾いた。上皇后さまは「良かったわね」と喜び、上皇さまは上皇后さまに「小石丸を残して良かったね」と話したという。

このように、現代の名工の皆さんはもちろん、上皇后陛下もご参加されての模造品制作は、もはや令和の《螺鈿紫檀五絃琵琶》という、新たな芸術品、そして楽器だと感じました。

展覧会のサブタイトルに「皇室がまもり伝えた美」とありますが、まさに上皇后陛下も養蚕を「まもり」、螺鈿紫檀五絃琵琶の美を伝えてくださっているのですね。

 

 

▼こちらは明治時代の模造品の解説。プレビュー画面が出ないので、リンク先でご覧ください。

bunka.nii.ac.jp

▼明治時代の模造品《螺鈿紫檀五絃琵琶》は写真撮影可能です。模造品とはいえ、明治の名工の皆さんが手がけたので、美しいです。

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▼会場で販売されていた正倉院宝物にフォーカスした本。大判でないので、奈良の正倉院展にも気軽に持っていけそう。 

すぐわかる正倉院の美術 改訂版

すぐわかる正倉院の美術 改訂版

 

 ▼以前、図書館で借りたのに、最後まで読めなかった本。今度こそ、読破したい、深い内容です。 

正倉院-歴史と宝物 (中公新書)

正倉院-歴史と宝物 (中公新書)

 

 森鴎外も絶賛する正倉院

明治時代の文豪・森鴎外は帝室博物館総長(現在の東京国立博物館館長に相当)を務めていました。東京国立博物館平成館前の池に、森鴎外の大きな写真が展示されているのも、彼の総長室跡のなごりなんですね。

そして、戦火を逃れた正倉院に感動し、こんな和歌を詠んでます。

夢の国 燃ゆべきものの 燃えぬ国 木の校倉の とはに立つ国

森鴎外は、この和歌を含む『奈良五十首』を残しており、奈良への畏怖の念を感じました。

 

正倉院の鍵を開ける際など、たびたび奈良を訪れていたという森鴎外。奈良についてだけで五十首も詠んでいるなんて、奈良が好きだったのかな、なんて思いました。 

鷗外「奈良五十首」を読む (中公文庫)

鷗外「奈良五十首」を読む (中公文庫)

 

簡単に五絃琵琶のことを知りたい方は、びじゅチューンの動画もおすすめです

螺鈿紫檀五絃琵琶」(正倉院)が発想の源。表面の螺鈿細工も、裏側の唐草模様も、ともかく美しい琵琶。こんな人が友達だったら、ずっと仲良しでいたい。琵琶はインドからシルクロード経由で中国へ、そして8世紀に日本へと伝わったもの。各地をわたった様子から「転校生」設定の曲にしました。

 

▼最近、螺鈿紫檀五弦琵琶のスマホケースやポーチなどが販売されてるのをよく見かけるのですが、どこかで流行してるのでしょうか。

奈良の正倉院展も始まりました!

奈良国立博物館正倉院展も始まりました!

こちらでも、教科書や図録で「飛鳥美人」としておなじみの《鳥毛立女屏風(第1扇)》が公開されています。

会期:令和元年10月26日(土)~11月14日(木) 全20日

www.narahaku.go.jp

感想

奈良で学生時代を過ごした20年ほど前から、断続的に通ってきた奈良の正倉院展。目的のひとつが、今回展示されている《螺鈿紫檀五絃琵琶》を鑑賞することでした。まさか東京で見られることになるとは、と未だに驚き、実際に鑑賞できたことが夢のようで、現実感がありません。また、20数年ぶりの公開とあり、次はいつ出会えるのだろう、生きてる間に出会えるのだろうか、と、すでに寂しくなってしまいました。《螺鈿紫檀五絃琵琶》は、自分にとっても、唯一無二の存在だと改めて畏怖の念が募りました。
せめて模造品はもう少し短い期間で公開してくださると嬉しいなあ、と思ったり。